第4話 せいり2(美久里)

 目を覚ますと、天井が見えた。

 だが、その天井は教室のものではない。

 顔と目だけを動かして、辺りを見回す。

 美久里の隣にはベッドが一つあり、そのベッドと美久里の周辺にはカーテンが閉められていた。


(ここは……保健室?)


 美久里は、上下に柔らかい感触があることに気づいた。

 それは、真っ白なベッド。

 つまり美久里は、保健室のベッドで寝ていたらしい。


「な、なんで……」


 確か自分は教室にいたはず――

 混乱している美久里は、とりあえず状況を把握するために起き上がった。


「え、さ、朔良……?」


 ベッドに顔を填めて、すやすやと寝息をたてる朔良がすぐ横にいる。

 美久里はますますわけがわからなくなった。


「あら、起きたのね」

「……先生……」


 カーテンを静かに開け、美久里に優しく声をかける養護教諭。

 そんな先生は、朔良を起こさないように小さく囁くように言う。


「朔良さんがここまであなたを運んできたのよ」

「え……朔良が?」

「よっぽどあなたのことが心配だったのね。朔良さん、ここに来てすぐ『美久里を助けてください!』って言うんだもの」


 先生は微笑ましそうに朔良を見る。

 美久里もそれに倣って朔良を見る。

 よほど疲れたのか、朔良は起きる気配が全くない。


「私が教室に戻った方がいいって言ったんだけど、全く聞かなくてね」

「え……っ! そ、そうだったんですか!?」


 ――なにもそこまでしなくても……


 教室に戻らないと、当然だが授業を受けられない。

 授業を休んだことになってしまうし、授業についていけなくなってしまうかもしれない。


 なのになぜ、朔良は美久里のために色々してくれるのだろう。


「いい友だちができて良かったわね。美久里さん」

「……とも、だち……」


 先生は美久里をたたえるように笑う。

 そして朔良は、どこか楽しそうに笑っている。

 ――何かいい夢でも見ているのだろうか。


「……ありがとう、朔良」


 起こさないように、優しく朔良の頭を撫でる。

 美久里は少し口角を上げ、花のような笑顔を浮かべた。

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