第3話 せいり(美久里)
――まずい、ことになった。
今日から約一週間、血祭りウィークが始まる。
にも関わらず、それに必要な道具を忘れて学校に来てしまった。
(どうしよう……誰かに借りないと……でも……)
――そう。コミュ障な美久里にとって、誰かに物を借りることは結構ハードルが高い。
だが、その時。
「おはよー。今日も早いな。いつも何時ぐらいに学校来てんの?」
救世主が現れた!
今日はいつものポニテ姿ではなく、髪をおろしている。
「さ、朔良……っ! あ、あの……」
美久里は目を輝かせ、朔良に駆け寄る。
――が、突然美久里のお腹に強烈な痛みが奔った。
「ぐっ……!」
締め付けられるような痛みに耐えられなかったのか、その場にうずくまる。
突然の出来事に驚いたのは、美久里だけではない。
「お、おい。美久里……? 大丈夫か!?」
朔良は美久里の元に駆け寄り、美久里の身体をゆする。
そんな朔良に、美久里は息絶えだえに言う。
「だ、大丈夫……ただの……生理痛……だから……」
「いや、大丈夫じゃねーだろ。お前薬は? 痛み止め持ってるか?」
「い、一応は……」
「どこにある? とってやるからちゃんと飲めよ?」
朔良は立ち上がり、美久里のカバンの中を漁る。
……と、そこには。
「……す、すげぇ……」
たくさんの『魔法少女になれたなら』の関連グッズが入っていたのだ。
アクキーや缶バッジ、同人誌やクリアファイルなどなど。
美久里がいかに『まほなれ』の大ファンなのかがよくわかる。
「――はっ! そんなことより薬……!」
つい『まほなれ』グッズに惹き付けられてしまっていた朔良だったが、なんとか正気に戻ることができた。
そして、ふちの方にしまわれていたピンク色のポーチから薬を取り出す。
「ほら、飲めるか?」
「……ん……」
もう、意識を保つのが限界にきていた美久里。
そんな美久里は、朔良にもたれかかるように倒れ、意識を手放した。
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