第2話 流れ込んだ秋風。

 ――溺れるように息苦しく、鼓動は段々うな垂れる。


 仕事終わりはかなりの頻度で仲のいい同僚2人とご飯に行く。

 もちろん安い居酒屋で。仕事の愚痴に花が開く。


 3人「今日もお疲れ!!」

 今夜も愚痴大会が始まった。


 休日の少なさ、サービス残業、人間関係…

 出るわ出るわいろんな愚痴。

 愚痴を吐くことは好きではないが、同僚がどんな考えで仕事をしているのかを知るために大切な時間だ。


 飲んで、食べて、笑って


 楽しい時間が過ぎていった。


 明日も仕事だ。食事を済ませたらそれぞれ帰路につく。

 夜9時過ぎ。

 3人「じゃ、また明日ー!!」

 

 街路に転がる銀杏を避けながら家路につく。

 (今から帰ったら何時間寝られるだろう)


 イチョウは黄色く、カエデは赤く色づいている。


 たちまち、寝ることを考えていると今朝の夢を思い出した。

 秋風ではない。悪寒でもない。

 ただ確かに体中に冷んやりとした感覚が走った。


 N「どうしてうつむいて僕を抱いていたんだろう」


 いつの間にかYの感情を詮索するようになっている。

 

 イチョウの葉は街灯に照らされて、ぼんやりと琥珀色を揺らしている。

 N(夢の続きを見てみたい)


 …


 N「!! 見たところでどうしたいんだ!」

 我に返った僕に冷たい秋風が吹いて、足を早めた。


 Yのメールを見返しながら、Yの姿を思い浮かべる。

 洗面所の鏡に映った僕を見て、どこが好きなんだろうと考える。

 明日寝癖がつかないように、いつもはしないドライヤーをしてみる。


 病気だ。


 すべての思考がYのために動いている。


 寝るのってこんなにドキドキするものだったっけ。

 夢を見るのってこんなに憂鬱なものだったっけ。

 僕の中の何かが変わり始めている。


――明日、自分の席に座るのが怖い。

 

 


 

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