温かい心


 二人で過ごす家。

 洋風のリビングの日当りのいい窓辺に置かれる、小さなサボテン。フェリシアの注ぐ水が、日の光できらきらとしている。

 澄羅が『もらってきたから育ててみようか』とフェリシアに差し出したのがこの、小さなサボテンだった。

 

 はやくおおきくなあれ


 そんな気持ちで、窓辺に肘をつきながら日光で光るサボテンを見つめるフェリシア。そんな彼女に、背後から声がかかる。

「そんなに見ていても、すぐおおきくならないよ」

 くすくすと笑う澄羅。フェリシアは、振り返ってむくれた。

「そんなことわかってるよ、せ…澄羅さん」

「おや、そうだったかい」

 澄羅もまた、窓辺にきて、サボテンに指を伸ばす。その小さなトゲをとんとんと指先で触る動作に、フェリシアは驚き止めた。

「え?!刺さっちゃうよ!?」

「うん、そうだね。でも気を付ければ大丈夫」

「そう…、なの?」

 いつの間にかすぐ横に来て微笑んでいた澄羅の顔に、フェリシアは心拍が上がり、そっと目をそらした。

「サボテンは、水をためるからね。水のあげすぎはよくないって、花屋の人が言ってたよ」

 フェリシアの脳裏には、先日花屋の前で話していた澄羅と、女性店員の姿が思い出される。


 澄羅さん、すごくうれしそうに笑ってたけど…


 ふとその人との関係が気になって澄羅を見つめる。彼は、つんつんと変わらずとげを触っていたが、フェリの視線に気付き微笑む。

 至近距離の微笑みにはまだ慣れておらず、ふいと目をそらす。澄羅はその様子にまた、くすっと笑った。

「なんで笑うの」

「いや、フェリがかわいくて…つい」

「………ばか」

 フェリは澄羅の背中を一撃たたいた。澄羅はそれにも微笑みを崩さず、幸せそうに笑っていた。


* * *


 フェリに、何か植物を贈りたいんだ。

 サボテン?なるほど、リビングに置けば日当りもいいしいつも見られるからいいかもしれないね。

 いつも相談に乗ってくれてありがとう。

 ……。…え?ああ、すまない。変な顔をしていたかな。

 フェリにこれを渡したとき、どんな顔をするのかなと考えていたらね。つい、ほころんでしまう。

 ははは、その通り、惚気だよ。

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