第2話
幸せ kwmr
彼女が最後に来店した日からどれぐらい月日が経っただろうか。少なくとも半年は姿を見ていない。バーテンダーの間でもあの特等席が埋まっていない、なんて少し話題があがった。
早く進展を聞きたいにも関わらず、姿を消した彼女。彼女が来ないことには元も子もない。果たして自分の持つ黒い感情とやらに気付かれてしまったのだろうか。別れ話のつもりがやり直そう、とでもなったのだろうか。はたまた、新しい人が隣に……
『河村』
「…っ、何?福良」
『話聞いてた?』
「ああ、えっと、何だっけ」
『しっかり聞いててよ』
「すまん」
自然と彼女のことを考える時間が増え、仕事が手につかなくなる事も増えた。ついでに福良に怒られる回数も。嗚呼、貴女が調子を狂わすなんて。
すると川上がニヤニヤしながらこっちに向かってくる。何だよ。
『河村さん、良いこと教えてあげます』
「何」
"河村さんの考えてる人、河村さんと両想いみたいです"
「なっ!」
『河村うるさい』
『河村さんお静かに願います』
川上のせいで伊沢と福良に怒られてしまったじゃないか。それより、何だって?り、リョウオモイ…?
「川上どういうこと?」
『河村さんの働いてるバーの常連さんですよね、俺の知り合いなんです。』
「ほぉ」
『丸メガネのバーテンダーが鈍感だって言ってました』
「…そう」
『進展お待ちしております』
「余計なお世話だ」
丸メガネのバーテンダー、とはあの店では自分しかいない。そして鈍感?つまり彼女は自分に気持ちに気付いてもらえないって思ってるってこと?何言ってんだよ、お互い様じゃないか。
モヤモヤと少しの苛立ちを抱えながら今日もいつものバーに出勤。
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