第46話
目的のT桟橋駅に着いてホームに立つと、時間的に降車よりも乗車客のほうが多かった。
改札を出ると、そこは港湾ビルの地下で、エレベーターに乗れば展望フロアーにもレストラン街にも行くことができる。もちろん1階に出て別のところにも行ける。
金太たちが到着した時間が少し早かったため、8階の展望ホールでしばらく時間を潰すことにした。ネズミは早速自販機でホットドリンクを買って飲んでいる。
金太は真っ先に貨物船「ブライト・クイーン号」が停泊しているか確認をする。船がいなかったらなにしにここに来たのかわからない。だが、貨物船は金太の心配をよそに、しっかりと埠頭に身を寄せていた。
それはよかったのだが、金太は状況を目の当たりにして後悔した。グーグルマップで周囲を確認しただけで、実際にここまで見に来てなかった。
そのとたん金太の鼓動が激しく鳴った。
「金太、どうかしたの? 顔色がよくないみたいだけど」
金太の異常を素早く察したアイコが近寄って訊いた。
「ううん、なんでもない」
金太は強がって返事をした。
もうここまで来たらやるしかないと思った金太は、デーモンを誘って1階に降り、見学者を装って周囲をゆっくりと歩いて回った。その結果、建物の周囲に荷物運搬用の細い道路があることがわかった。さらに道路が90度曲がるその部分に死角のあることがわかった。あとは防犯カメラの位置なのだが、ふたりでどれだけ探してもまったく見当たらなかった。
急いでみんなのところに戻った金太は、
「下見をして大体のことはわかった。そこで、みんなで行くにはリスクがあり過ぎるから、やはり実行はオレとデーモンでする。だからみんなはここで待機しながら成功するのを祈っててくれ」
みんなを集めて小さな声で伝えた。
それを聞くと、3人とも納得と安堵の入り混じった顔で金太を見た。
いまではすっかり帳が降り、いつでも実行することができる時間になった。
確認のため金太は窓の外を覗く。海は墨の色に変わり、対岸の乳白色、オレンジ、青などの灯りが映り込んでいる。左手には首の長い動物のように見えるクレーンが黒いシルエットとなり、首の部分に取り付けられた航空障害灯が赤く明滅していた。
踵を返した金太は、デーモンに目で合図をすると、アイコからジョージの入っているリュックを受け取り、デーモンもドローンの入った少し大きめのリュックをおもむろに背負うと、わざとゆっくりした足取りでエレベーターに向かった。
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