第45話

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 いよいよ決行の日が来た。

 港という場所は、普段だと人も疎らなので行動を起こすには最適のように思えるのだが、逆に目立ってしまって不成功に終わるリスクが高い。みんなで相談した結果、やはり人手の多い日曜日にしようということになった。

 この1週間というもの、誰もが不安と成功の祈願とでベッドに入ってもまんじりともしなかった。しかし金太だけは違っていた。金太の胸には不安というものが欠片もなく、とにかく頭に浮かぶのは、貨物船の甲板で帰国を楽しみにするジョージの笑顔と、迎えに来ているミズーリのおばさんと抱き合って喜ぶ姿だけしかなかった。それとは別に、2年半様々な問題を一緒に解決して来たロビンのメンバーが今回も協力してくれたことで、さらに絆を強めたことが嬉しかった。

 これまではすべてが予行演習のようなものだったが、それがようやくきょう夢にまで見た作戦が実行される。金太は集合時間の2時30分までそわそわしっ放しだった。

 ドローンでジョージを搬送するには日が暮れてからじゃないと人目についてしまう。それだから当然夕方から夜にかけての行動となる。だが、最近では日没時間が早くなっているので、夕方5時になるとすでに薄暗くなるので、あまり遅くまで外にいられない中学生の金太たちにとって好都合だった。

 金太たちのところから港まで行くには、最寄りのH駅から電車で30分そして地下鉄に乗り換えて20分ほどかかる。地下鉄T桟橋駅で下車すれば目の前が港だ。最低でも1時間はみておかないといけない。


 金太はネズミと一緒に約束の時間の20分前にH駅の改札でみんなが来るのを首を長くして待っていた。2番手はグレーのダウンジャケットを着たノッポだった。駐輪場に自転車を置いたノッポが手を振りながら駆けて来る。

「ボラーァ」「ボラ」「ボラーァ」

「大丈夫やろか、きょう」

 やはり心配でならなかったのだろう、ノッポの第一声がこれだった。

「心配ないって。あれだけ訓練したんだから」

 金太がノッポを宥めているとき、アイコが赤いセーター姿に紺色のリュックを背負って現れた。

 いちばん遅れたのはデーモンだった。しかしみんな駅まで自転車で来たのに、デーモンだけは歩きだった。

「デーモン、自転車じゃないのか?」

 秘密結社の挨拶をすませた金太が訊いた。

「うん。だって、リュックにドローンが入ってるし、ほらこれ」

 デーモンが見せたのはあの白い箱だった。

「そうか、ドローンと一緒にジョージを入れることできないもんな」

「だから、近くまでパパに車に乗せて来てもらった。なあ、ジョージをこのまま運ぶわけにいかないから、誰か頼めないか?」

「わたしのリュックでよければジョージを預かるわ」

 アイコは背中のリュックを降ろしながらいった。

「アイコ、頼むよ」

 金太は自分が手ぶらなのを後悔しながらいった。

「いいわよ。じゃあみんなで周りから見えないように囲って」

 そういってアイコは、リュックのファスナーを開けて箱からジョージを移した。そしてなかにあったタオルでジョージをガードした。 

 準備ができたところで銘々切符を買うと、ホームの階段を昇った。

 すぐに電車がホームに入って来た。日曜の3時近くということで、都心に向かう乗客はそれほど多くなかった。

 結局空席があったにもかかわらず、1度もデーモンは座らなかった。背中のリュックが心配でならなかったからだ。いざ決行という段になってドローンが飛ばないとなったらみんなになにをいわれるかわからない。それ以上にジョージがアメリカに帰れなくなるのが可哀そうだった。

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