第39話

 逆に開き直ってカミングアウトしたとしないか。そうすれば、マスコミが津波のようにドッと押し寄せることになる。テレビ、ラジオ、新聞、週刊誌、日本中どころか世界中のマスコミが取材することになるから、デーモンをはじめみんなに迷惑が及ぶことになるじゃないか。消去法で脱出方法を択んで行き着いたところが、この方法なんだ。これについてみんなの意見はどう?」

 金太はこの1週間ひたすら考えたのだろう、彼の発言に澱みはなかった。

「……貨物船ということは、港ということよね。そんなとこでドローンを飛ばしたら即見つかるんじゃないの?」

 アイコはまず思いついた不安を口にした。

「昼間やったらあれやけど、夜暗くなってからやったらまず見つからんと思うよ。ぼくも実際に港には行ったことがなかけんが、テレビで観たときには人の姿はなくて、真っ暗やった」

 ノッポはメガネを人差し指で押し上げながらいった。

「それって本当に大丈夫なの、金ちゃん?」

「心配はいらない。実行するのはオレとデーモンでするから。ほかのみんなはアイデアだけ出してくれればいいんだ」

 金太は、顔の前で手を振りながらネズミを見た。

「ええッ! そんなァ。ぼくだけ仲間外れーェ?」

「だって、もしおまえが捕まったら、カアさんが心配するだろ?」

「それはぼくだけじゃないじゃん。みんなのトウさんだってカアさんだって犯罪者になったらきっと泣くよ」

 ネズミは年下の自分だけが爪弾きされるのが嫌だった。これまでみんなで魚釣りをしたり、夜祭りに行ったり、サイクリングをしたのに、ここに来ておいてけぼりにされるのは本当の仲間でないような気がした。

「ふたりともちょっと待たんネ。まだ行動すると決まったんやなかけん、もう少し金太の話ば聞いたらよか」

 確かにノッポのいうとおりで、金太は脱出のアイデアを出したまでである。

「金太、も少し先を話してみてくれない?」

 アイコはハンカチで小鼻のあたりを押えながらいった。

「わかった。オレの考えた脱出シミュレーションを詳しく話すと、この前デーモンに行ったときに、ドローンを操縦させてもらった。それとあのクソ生意気なカラスから、ひょっとしたらこれは上手くいくかもと思って、そこからイメージを広げていったんだ。

 まず、さっきノッポがいったように、日が落ちて暗くなってから桟橋に行き、ジョージをドローンに括りつけて貨物船の甲板に送り込む。まあオレたちにできるのはそこまでだ。あとはジョージが向こうに着いたら、ミズーリのおばさんになんとかしてもらおう。無責任かもしれないけど、見届けるまで一緒にいたら今度はオレたちが密航者になってしまう。それしか方法がないだろ?」

「そこまで聞いたらところでは、なんか上手くいきそう」

 ネズミは少し安心した顔になった。

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