第37話

「わかった。でも直接じゃ熱いわよね」

 スイッチを入れたドライヤーを自分の手に当てながらいった。

「だったら、ハンカチかタオルでガードすればいいんじゃないのか」

「そうね、そのほうがいいね」

 アイコは自分のハンカチを開いてドライヤーに被せてテストをした。

「ドライヤーがあるんなら、少しウエットティシュを暖めたらどげんネ? いきなりティシュやったら、寒かろうもん」

 横からノッポがアドバイスを送る。早速アイコがティシュを暖め、デーモンが半裸になったジョージを優しく清拭しはじめた。

「おい、見てみろよ。やっぱジョージも人間の男だよ。パンツの前がデカくなってんじゃん」

 金太が腹を抱えながらジョージをからかう。

「バーカ、もう知らない。金太、あんた自分でやりなさい」

 アイコは顔を赤らめながらドライヤーを放り投げた。

 男連中はジョージのその部分に興味を持ったのか、ジョージに顔を近づける。これにはさすがのジョージもお手上げ状態で、両手で前を押えながら背中を向けてしゃがみ込んでしまった。

 お祭り騒ぎが下火になった頃、ふたたび部屋のドアがノックされた。

「あんたたち、なに騒いでんの? お母さんが、オヤツがあるから取りに来なさいって」

 金太の部屋が余程気になるのか、しきりに首を動かしながら増美はいった。

「わかった。すぐに行くから」

 おそらく増美は金太の行動を見て、怪しいと感づいているに違いない。だが、いまの金太にはどうやって誤魔化すかなんて考えてる余裕はなかった。

 金太が部屋に戻ったとき、今度は人数分のバームクーヘンと紅茶がお盆に載っていた。口にするものを見るとどうしても反応してしまうのか、金太以外の全員が溜め息のような声を洩らした。

「みんな、ケーキを食べながら聞いて欲しい。

 せっかくみんなが集まったのに、結果的にいい案が出なかった。でもオレとしては、ジョージを帰国させるんなら、クリスマスまでにはなんとか帰してやりたいと思う。それから逆算するともう期限がない。どうしたらいいんだろう」

 金太の深刻な表情は、全員の気持を引き締めた。

「ここまで来たら最後までするよりなかろうもん。ほかのみんなは知らんけんが、ぼくは金太と一緒にやるト」

 普段控え目なノッポだったが、ここに来て一歩前に出て発言した。

「ノッポ、ありがと」

 金太は右手をノッポの前に差し出した。

「ちょっと待って。わたしだって途中で投げ出すことなんかしない」

 アイコは、手にしていた紅茶のカップを勉強机に置いて、険しい顔でいった。

 そうなるとデーモンは本人だから当然だが、気持が定まってなかったネズミも行きがかり上みんなの意見に賛同せざるを得なかった。

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