第36話
5人だけならリビングとキッチンで食べられそうだが、なにせジョージが一緒だからそうもいかなくて、結局2階の金太の部屋で昼食を摂ることにした。
手伝いをさせるつもりなのだろう、金太はネズミを連れてキッチンに向かった。15分ほどして、ふたりはそれぞれお盆を持ち、その上にはインスタントラーメンやインスタント焼そばが載っていた。
「自分の好きなの取って」
そういいながら金太はお盆を差し出す。ネズミも同じようにした。いわれたほかの3人は、遠慮なく好きな即席めんに手を伸ばした。
しばらくすると、ズルズルと麺を啜る音がいっせいに部屋中に響きはじめた。
食べるのをやめたデーモンが、ジョージの箱を開けて焼そばを食べさせようとしていたそのとき、突然ドアがノックされた。
「金太、お母さんが飲み物はどうするのって」
姉の増美がドアの向こうで訊いている。
「なんでもいいよ」
金太は急いでドアのところまで駆け寄ると、姉の増美に部屋を覗かれないように細めにドアを開いていった。
頃合いを見計らって、金太は階下に飲み物を取りに降りて行った。増美に部屋を覗かれたくないからだ。いつもなら別にどうこういうことはないけれど、きょうに限ってはジョージがいるので絶対に避けなければならない。
金太がキッチンからポットに入った冷たいお茶と、人数分のグラスを運んで来た。
余程空腹だったとみえて、4人が4人とも容器のなかに顔を埋めるようにして箸を使っている。ラーメンを択んだノッポは、金太が部屋に入って来たときに見せた顔は、カップの湯気でメガネを曇らせ、まるで白いメガネのウルトラマンのようだった。一方同じようにラーメンにしたネズミは、顔にまとわりついた湯気を手の甲で拭いながら熱いスープを飲んでいる。ネコが顔を洗っている仕草を連想させた。
腹もきつくなって全員が放心状態になっていたとき、「はい、これ」そういいながら金太がデーモンに渡したのは、アルコールを含んだテッシュだった。
「なに、これ?」怪訝な顔のデーモン。
「これでジョージの躰をきれいにしてやるといい」
どうやら金太は、先ほどキッチンに行ったとき、こっそりと隠し持って来たらしい。
「ありがと」
金太に礼をいったあと、デーモンはジョージに説明をした。
ジョージは恥ずかしがって拒否するのかと心配していたが、自分でも気持わるかったのか、意外とすんなり服を脱ぎはじめた。
「アイコ、裸になったら寒いだろうから、これで暖めてやって」
金太がアイコに渡したのは、いつも自分がヘヤーセットに使っているハンドドライヤーだった。
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