第34話
2
一週間後の日曜日、秘密基地に集合したのは、朝の10時だった。
金太は、土曜はどうだろうと打診をしたのだが、ノッポもネズミも今度の土曜日は塾があるので日曜日のほうが都合がいいということだった。集合時間のほうも、ほとんど午後の1時だったが、緊急ということもあって早めの時間とした。
いちばん乗りはやはりデーモンだった。ジョージのことが気になってならなかったに違いない。毛布を捲って鳥カゴのなかを覗くと、ジョージは意外にも余裕の表情でデーモンを迎えた。
ジョージは、この1週間小屋の周囲で奴の甲高い鳴き声は聞えたが、小屋のなかには進入して来なかった。でもやはり毎日心臓が跳び出しそうなくらい心配をしたと、デーモンに話した。
「ボラーァ」
しばらくしてメンバー全員が顔を揃えた。
「ごめんな、みんな勉強が忙しいのに」
最初に口を開いたのは金太ではなく、椅子から立ち上がったデーモンだった。
「いいのよ、気にしなくても。考えてみると、こうやってみんなが顔を合わせることは、この先それほど多くないかもしれない。みんなで消えない想い出を作ろうよ。ねえ、金太」
メンバーのなかでこんなことをいえるのはアイコぐらいだった。
「オレはいつでもみんなと一緒にいたい。でもそういうわけにもいかないからな。
それはそうとして、どうだろう、なにかいい方法を考えてくれた? どうネズミ」
金太は真っ先にネズミを指名する。
「ぼくだって一生懸命に考えたよォ。だけど、ひとつしか考えつかなかった」
ネズミはやや不貞腐れ気味に言い訳じみたことをいった。
「ひとつでいいんだよ。そいで、その一生懸命考えた末の名案というのは?」
金太は、ネズミが怖がるような真剣な顔になって訊いた。
「ジョージは、躰がそんなに大きくないから、小さなダンボールかなにかの箱に入れて航空便で送ったらいいと思った。もしX線で調べられたとしても、ゴムかシリコンの人形としか見られないんじゃないかなァ。ニューヨークまで行かなくても、とにかくアメリカの飛行場に着いたら、箱から脱出すればあとはなんとかなるんじゃないの」
ネズミは1週間一生懸命に考えたらしくて、胸を張って自慢げに話した。
「そんなのだめよ。だって海外の航空便っていうのは、国内の宅配便と違って、いろいろ煩わしい手続きなんかがあるから、そうすぐには送れないはずよ」
アイコは、髪を耳にかけながらネズミを睨みつけるようにしていった。
「そうなんだァ」
ネズミは急にしょぼくれてしまった。
「いいんだよ、ネズミ。そうやって友だちのために努力するってことが大事なんだよ。それがいつかは自分に戻って来る。『情けは人の為ならず』ってことわざがあるだろ。あれはそういう意味なんだ」
「ええッ、そういう意味だったの? ぼくはてっきり、他人に親切にしてはいけない、甘やかしたらその人の為にならない――そう解釈してた」
ネズミは本当にそう解釈していたのか、金太の説明を聞いて目を丸くした。
「ひとつ利口になってよかったな。ところで、アイコはなにかいい方法を見つけてくれた?」と、金太。
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