第25話

「どうした、ジョージ」

「アイ ウオント トウ ビィ リフレッシュ」

 ジョージは肩をすくめて金太にアピールした。

「そうか、気分転換がしたかったのか。そいで元気がないんだ」

 納得の顔でそっと左手でジョージをすくうようにすると、大事なものを運ぶようにして部屋を出た。ひと足ずつゆっくりと階段を降りてリビングまで行くと、ソファーにジョージを降ろした。

「フーウ」

 ジョージはソファーの上で横になり、魚のヒモノのように大きく背伸びをした。その次にはウエスタンブーツを履いたまま、トランポリンのように何度も跳ねた。

「ごめんな、オレぜんぜん気づかなかった。そりゃあそうだよな、あんなところに一日中閉じ込められていたら気も滅入るよな」

 金太は、言葉がジョージに伝わっているかいないかに関係なく喋っている。

 そのとき、今度はジョージが金太の顔を見ながらしきりに腕を下に向けている。

「わかった、わかった。いま降ろしてやるから」

 絨毯の床に下ろされたジョージは、借りて来たネコのように、用心深くあたりを見回しながら歩き回った。

 金太がテレビを見せてやろうと思い、リモコンボタンのスイッチを押した。突然大きな画面に自然の風景が映し出された。

 ジョージはなにごとが起きたのかと思うくらい愕き、目を丸くしてたのだが、映し出された景色を観ているうちに故郷が懐かしくなったのか、直立不動のまま画面に釘づけになっていた。

 金太は、そんなジョージの姿を見ていて、新鮮な空気を吸わせてやろうとテラスへのガラス戸を10センチほど開けてやった。すると初冬の匂いを含んだ風がすーっと入り込んで来た。窓の淵に寄せられている花柄のカーテンが大きく息をした。

(そうだ、帰ってからまだジョージになにも食べさせてなかった)

「ジョージ、アー ユー ハングリィ?」

 するとジョージは画面から目を離して金太のほうに顔を向けると、悲しそうな顔で首を立てに振った。

「ジョージはなにが食べたい? といってもオレは料理ができないから、簡単なものにして欲しい」

「ラーメン ※△#&$%○♭¥~」

 ラーメン意外なにをいっているのかさっぱりわからなかったが、ジョージの口から出た思いもかけない言葉に、金太は一瞬耳を疑うほどだった。

「わかった。それならなんとかなりそうだ」

 金太はジョージに向かって指差し振りながらソファーから立ち上がると、食品棚に向かった。この前そんなこともあろうかと、ちゃんと下調べをしてあった。

 片手鍋に規定量の水を入れ、ガスコンロのスイッチを押す。お湯が沸くまでの間に茶碗と箸を準備した。

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