第24話

 いつバレるのだろうとひやひやドキドキの毎日が続き、案の定姉の増美が日々の変化に気づいた。

「金太、あんたやっぱ最近おかしくない?」

 学校から帰ってしばらくしたとき、冷蔵庫からヨーグルトを取り出した増美は、リビングでテレビを観ていた金太に話しかけた。

「はあ?」突然のことに一瞬愕いた金太だったが、動揺を必死で隠して、「なんのこと?」

 と増美を見た。

「このところ食事のときに落ち着きがないし、これまで開けたことのない食品棚を空けてみたり、いつもはお母さんにお風呂入りなさいっていわれてもなかなか入らなかったのに、この頃ではふたつ返事で入るし、この前したことのない自分の部屋に掃除機をかけてたっていうじゃない。もうひとつ、このところ頻繁に河合くんがあんたの部屋に遊びに来るっていってたよ、お母さんが。なにかおかしなことでもやってんじゃないの?」

 増美は、立て板に水のごとく最近の金太の異常な行動を並べた。

「そうかなァ。でもデーモンが家に来るのは、あいつに英語を教えてもらってるからだよ」

 金太はとぼけていった。

「ははーん、金太、さてはあんた恋の病気に陥ったネ」

 増美は意味深な笑みを浮かべて金太を見る。

「違うよ、そんなんじゃない。勝手な想像するなよ」

 “恋”とか“愛”とかという言葉に異常に反応する多感期の金太は、テレビを消してむくれた顔で自分の部屋に上がっていった。


 そんな綱渡りの日々を送っていたとき、とうとう、発見されるという事件が起きてしまった。

 金太が学校から帰ると、家には誰もいなかった。母親は高校のクラス会があるので3時くらいから外出をした。父親は仕事の都合で帰りが遅くなる。姉の増美はまだ学校から戻っていなかった。

 自分の部屋に入った金太は、いつものように真っ先にジョージのご機嫌を覗う。自分から面倒を看るといい出した手前、ジョージの身にもしものことがあったらデーモンに言い訳が立たない。正直なところ、ジョージのことで頭のなかが一杯で、まともに勉強に集中できない。このままだと、勉強のできない元の自分に戻りそうだと不安を抱く金太だった。

 ジョージに帰って来たことを知らせようと箱のなかを引き出してみると、なんか元気なさそうな顔で横になっていた。

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