第21話

 月曜日の放課後、金太とデーモンは、肩を並べてある場所に向かっていた。

「金太、ぼくちょっと行ってくるから、きみは先に家に帰ってていいよ」

 そういってデーモンが向かった先は、コンビニだった。校則で下校時にコンビニに寄ってはいけないことになっているので、学生服を着て、それもふたりで立ち寄っていたら誰に見られているかわからない。デーモンは金太に迷惑がかからないように、別行動をとったのだ。

 だが、先に家に向かっている金太の手には、デーモンの学生服の上と学生カバンがしっかりと抱えられていた。

 金太が家に戻って20分もしないうちに玄関チャイムが鳴った。デーモンがコンビニの白いビニール袋を提げて立っていた。

「ありがと」

 笑いながらデーモンは金太から上着とカバンを受け取る。

「いまから秘密基地に行くんだろ? オレも一緒に行くよ」

 金太は、母親に聞えないように声を殺していった。

 ……

 小屋の鍵を開けてなかに入ると、デーモンは愕いた。確かに昨日ジョージを入れて来たのは、いつもの白いケーキの箱だったのだが、いまジョージがいるのは、屋根のついた小さな犬小屋だった。

「どうしたんだ、これ」

 デーモンはどうなっているのかまったく理解できないといった顔をしている。

「オレが昨日遅くに家から運こんで来た。心配しなくていい。これは、ずいぶんと前に、家でイヌを飼うことになったとき、トウさんと一緒に作ったやつで、いまは飼ってないから、そっと持って来た。これはそのとき敷いていた毛布だ。これから寒くなるから、あったほうが便利だと思って」

「ありがと、金太」

 そういったあと、デーモンはビニール袋から、ポテトチップ、ベビースターラーメン、クリームパンを取り出してテーブルの上に並べた。

「なんだよ、それ? まさかここでふたりしてパーティでもするんじゃないだろうな?」

 金太は真面目な顔で訊く。

「違うよ。これは、ジョージの食事。だってぼく料理なんてできないから、家のときは食事の余りものをそっと部屋に運ぶのが精一杯だ。だからこっちに来たらこんなことくらいしかできないよ。幸いにもジョージはこういうものが好きだからいいんだ」

 デーモンはポテトチップの封を開けると、しゃがみ込んで犬小屋のなかであぐらを組んでいるジョージの前に置いた。

「アイム ベリー ハングリー。 アンド ア スロート イズ オルソ サースティ」

 ジョージは不機嫌そうな顔でぼそりといった。

「ごめん、ごめん。そうむくれるなよ。ほら、ジョージの好きなポテトチップだ」

 デーモンは、ジョージのご機嫌をとりながらミネラルウオータのフタを開けると、そのなかに水を注ぎ込んだ。

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