第20話
3
金太は祭りの夜、デーモンに聞きたいことがあったのだが、なかなか聞く機会がなかった。それはジョージの近況についてだった。秘密基地でジョージのことを知らされてから1週間が経つ。デーモンが毎日世話をしているはずだが、家の人にバレてないかそれが気がかりだった。
日曜日の午前中のこと。金太がパソコンをいじっていたとき、突然メールが入った。メールはデーモンからだった。
《 デーモンです
昨日は楽しかったヨ。妹もすごく喜んでた。
きょうメールしたのは、ヤバいんだジョージが。
詳しくは秘密基地で話したい。時間ないか? 》
金太はすぐに返信した。もちろんOKだ。
1時間後に秘密基地で落ち合ったふたりは、重い空気のなかで話をはじめた。
「ジョージが見つかったのは、お手伝いの君代さんが、ママにいわれてぼくの部屋を勝手に掃除をしたんだ。どうやらそのとき君代さんが見つけたらしい。でもはっきり見られたわけじゃなく、部屋の隅で動くものを見て、悲鳴を上げたみたい。君代さんは、家事全般をやっているんだが、極端に生き物が嫌いで、ネコとかイヌのようなのはいいんだが、虫とかカエルのような生き物は、からっきしだめなんだ。だから、ときどきキッチンあたりから絹を裂くような悲鳴が聞えて来ることがある。
ぼくはなんとか誤魔化したからいいけど、2回目となるとそうはいかない。そこで金太に相談なんだが、しばらくジョージをこの小屋に置いてくれないだろうか」
デーモンは真剣だった。別に好んでジョージを向こうから連れて来たわけではなく、ジョージが勝手にスーツケースに潜り込んで来たのだから、そこまでジョージをかばうことはないはずだが、長いことジョージの身の回りの世話をして来て情が移ってしまったに違いない。
「それはいいけど、毎日ここにかよってジョージの面倒を看るっていうのか?」
ようやくここに呼ばれた意味のわかった金太は、デーモンのことが心配になった。
「うん。だって、そうするしかないじゃん。このまま家に置いておいたら、間違いなく君代さんに発見される。もしジョージが見つかりでもしたら、大変なことになってしまう。そうなったら、事情を知ってる金太にだって迷惑がかかる」
「わかった。デーモンがそこまでいうんだったら、ジョージをここに置いてもいいよ」
「センキュ、金太。本当にありがと。でも……」
デーモンは突然表情を変えて金太を見た。
「どうしたんだよ」
「うん。でも、もしここにほかのメンバーが来たらどうしよう。そうなったら完全にアウトだ」
「それはないな。そりゃあ、昔……秘密結社ができた当初は珍しくて毎週土曜日に集まっていたけど、この頃ではみんな受験勉強で忙しいからオレが集合かけたときくらいしか集まらない。もし見つかったとしたらそのときはそのときさ」
自信ある口調でいった金太は、ぽんぽんとデーモンの肩を叩いた。
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