第17話
2
金太は、次の金曜日の夜、メンバー全員にメールを送った。
《 金太で~す
突然ですが、あした稲田神社で秋祭りがあります。
もしよかったらロビンのメンバーで夜店に行きませんか。
都合のつく人は、夜7時に神社の入り口に集合して下さい。 》
稲田神社は金太の自宅から自転車で10分ほどのところにある氏神様で、1年に春、夏、秋の3回祭礼が行われ、今回が秋の祭礼になる。
金太がみんなを祭りに誘った本当の目的は、長いことニューヨーク生活をしていたデーモンに、日本のお祭りやあの賑やかな屋台を見せてやりたかったのだ。ずっと日本にいてもお祭りと聞くと体中の血が騒ぐのだから、久しぶりに見る祭りは改めて日本人であることを感じるに違いない。
1時間もしないうちに全員から参加のメールが入った。それを見た金太は、デーモンに、「もしよかったら優芽ちゃんも連れて来たらいいよ」と追加メールを送った。
土曜日の夜――。
デーモンは直接神社へ行かずに金太の家に顔を出した。稲田神社の場所がわからなかったのと、妹を連れて来てもいいという昨日の金太のメールに甘えて優芽も一緒に連れて来たのだ。
秋の夜は暗くなるのが早い。6時半になるとすっかり帳に包まれ、空は神秘的な濃紺色をたたえていた。気の早い星が瞬く姿は、遅くなった友だちを手招きしているようにも見えた。
「優芽ちゃん、お祭りにいったことある?」
金太は優しく話しかけた。
「ううん、行ったことないと思う。お祭りってどういうの?」
優芽は小さいときに一度パパと一緒に行ったことがあるけれど、もうすっかり忘れているようだった。
「オレもよくわかんないけど、とにかくいろんな屋台が出て楽しいんだ。おいしいもんもいっぱいあるから、優芽ちゃんが欲しいもん買ったらいいよ」
金太は優芽の質問に戸惑った。そういえばお祭り、お祭りと騒ぐものの、1日中神社でなにをやってるのかまったく知らない。ただたくさんの屋台が軒を並べるから楽しいのと、夜祭りとなると、それを口実に家を出られることで、抑えられないほど心がわくわくした。
「ここから遠い?」
ちょっと不安になったのか、細い声で優芽は訊く。
「もう少し歩いて大きな通りに出たらすぐだよ」
3人がしばらく歩いていると、前方がぼんやりと明るくなっている場所が見えて来た。
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