第16話

「このジョージというおっさんのことを家の人は知ってるのか?」

 デーモンの話を聞いた金太は、心配そうに訊いた。

「いいや、誰も知らない。知っているのは、ぼくと金太だけ」デーモンは少しほっとしながらも、これからのことを思うと不安でいっぱいだった。「これから先、どうしたらいいと思う?」

 そのとき、箱のなかで眠っていたジョージが目を覚まし、よくわかない英語でまくしたてた。

「いま、ジョージのことをぼくの友だちに相談してたんだ。彼はぼくの友だちで金太っていうんだ」

 デーモンは、流暢りゅうちょうな英語で箱のなかから見上げたままのジョージに説明した。するとジョージは金太に向かってコツメカワウソのような小さな手を差し出した。

「ジョージデス、ハジメマシテ」

 意外に上手な日本語だった。

「金太です、よろしく」

 金太はおずおずと手を差し出しながらいった。そしてなにかを思い出したように金太は、ポケットからかわり玉をひとつ取り出してジョージに手渡した。両手で受け取ったジョージはなんだかわからないといった顔でかわり玉を眺めている。普通のかわり玉だったが、ジョージにしてみればバスケットボールくらいの大きさがあった。

「イット イズ キャンデー」

 金太は自信なげに英語でいってみた。するとジョージは半信半疑でかわり玉に顔を近づけ、ぺろりと舐めたあと金太に笑顔を返した。

「どうしたらいいんだろう? 突然こんな相談されても、すぐにはいいアドバイスは思いつかないよ。真剣に考えるからもう少し時間が欲しいな」

 金太はそういったものの、どこに思考の糸口があるのか見当がつかなかった。

「もちろんだよ。でも金太、誰にも話さないと約束してくれるか?」

 デーモンは金太を真正面に見ていった。

「本当は結社の10の掟のなかに『けして仲間同士隠し事をしてはならない』という条文があるんだけど、デーモンの頼みだから特別に秘密にするよ」

「ありがと、恩に着るよ。『ロビン秘密結社』のメンバーになってよかったよ」

 デーモンは笑顔でいった。

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