第10話

「うん、あるよ。こっちのイジメがどういうものかよく知らないけど、そんなんどこの国にいってもそれはあるんじゃないの? 特にアメリカという国は人種差別が激しくて、無視されたりするのは序の口で、黒人の男子なんかが集団暴行に遭ってる現場を何度も目撃したことがある。ぼくが通ってた学校はそれほどでもなかったけど、ほかの学校では自由過ぎて学校じゃないみたいだ、という話を聞いたことがあるよ」

「そげん恐ろしかとこに、よお行ったね」

 ノッポは何度も横に首を振りながらいう。

「だって、両親についていくのはあたり前だろ? それに、ちゃんと自分の考えを持っているのと、それを人にいい伝えることができたら、イジメられないと思うよ」

 デーモンの発言には自信に満ちたものがあった。

「お待たせーェ」

 金太が家から戻って来た。その手には白いビニール袋が提げられてあった。昨日の夜から冷蔵庫で冷やしてあった缶コーラが入っている。

「さあ、みんな1本ずつ取ってくれ」

 4人が頭をくっつけるようにしてビニール袋に手を入れて缶コーラを掴み出した。

「そしたら、みんなで乾杯しよう。さあ、行くぞ――カンパーイ」

「乾杯」「かんぱい」「カンパイ」

 手にした缶コーラを顔のあたりにかざしたあと、咽喉を鳴らしながら上手そうに飲んだ。

「きょうはこれで解散しますが、みんなはまだデーモンの連絡先を知らないと思いますから、ここで連絡先を交換して下さい」

 金太の号令でみんなはポケットからスマホを取り出し、それぞれ交換しはじめた。

 その光景を横で見ていた金太は、みんなのことが羨ましくてしかたなかった。なぜならば、金太はスマホはもちろんのこと、ガラケーさえも持たしてもらえないからだ。何度も母親に直訴したことがあるのだが、そのたびに「高校入学するまでは、だめ」ときつくいわれている。だからリーダー格である金太だが、みんなに連絡を取るときはイエ電かパソコンのメールでしかない。こうやってスマホのLINEグループで連絡を取り合うのが夢だった。

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