513話 邂逅
試合開始と共に、せりあがっていた壁が引っ込むのに合わせてチャージ開始……ってのはやめておく。数が少ない場合と、ガウェインの奴ならこっちの手を知っているだろうから、急襲してくる可能性が高い。だからこういう時に下手な行為はやめるに限る。
案の定だけど、向こうから速攻で魔法矢がぶち込まれるのでアリスでガード。柱の様な障害物が点在はしているので、上手い事使いながらうちの主力をぶつけていきたい。向こうのメイン盾はガウェインで、こっちはアリス、コンセプト的には結構似てる編成になるわけで、こうなってくると立ち回り含めての個々の能力って事になる。
「不安要素が多いな、こっちは」
ヤスと私である程度の制御は出来るとはいえ、すぐ突っ込むのが2人いるわけで、そこが問題になる。本当にある程度しかいう事を聞いてくれないので、頭に血が上ると制御不能になる可能性が非常に高い。って思ってるだけだったりして、案外クレバーなのかな。
とりあえず開幕、正面に出てくるガウェインに対してはアリスをぶつけておき、後ろにはヤスと松田を配置しておく。遊撃は私含めてのエルアル姉妹と関口。もうこの陣形は何一つ変わりないな。問題は誰が誰を相手にするか。
「パッと見て向こうが3人多いから、そこが問題すぎる」
こっちは4人で9人相手にしなきゃならんわけだし?アリス組が良い感じにガウェインを攻めれるのなら向こうにも人数を割いてくれるはずだし、状況としては良い所にいけそうか……?
「避けろアカメ!」
障害物の裏であれこれ考え事をしていたらいきなり声を掛けられるので、それに反応してすぐに横っ飛び。その直後に電撃が走り地面を吹っ飛ばす。久々だなあ、遠距離で魔法が吹っ飛んでくるの。
「ありゃー、メタリカだな……さーて、どうするかな」
「どんな奴だ」
「お、興味ある?このゲームでも珍しい、魔法弓の使い手」
「強いのか」
「私が知る限りではあいつ以上の弓使いは知らん」
どちらかと言えば魔法使いか。いや、弓使いでいいのか?ハイブリッド型ってのはどっちを重きに置いてるかでよく言われるけど、どっちともわからんな。ああ分かりにくい。
「儂の獲物だ、手を出すなよ」
「護衛の一人や二人いるだろうから気を付けるんだぞ」
「ああ、分かっておる……わっ!」
飛んできた氷の矢を一刀両断し、にんやりと笑う関口。雷の矢だったら雷切なんてあの刀に命名しちゃうわ。そして楽しそうに、障害物から駆け出すと飛んでくる魔法矢を斬り落としながら突き進んでいく。あのバイタルはすげーな……つーか、私の周りバトルジャンキー多すぎる。
「あんまり突っ込みすぎると支援できんからな!」
「深追い禁止、じゃろ!」
本当に分かってんのかね。
「さて、これで分かってるのがガウェインとメタリカ、後8人……だと、いいな」
壁がせり上がる瞬間にしか数を数えてなかったのは失敗したなあ、ヤスの奴に数えてもらえば……って思ったけど、あいつもあいつで手一杯だったろうし、あんまし負荷を掛けさせるのは良くないな。反省反省……反省終わり。
「とりあえず牽制射撃しながら相手戦力を確認と行くか」
柱の陰から向こう側を見るが、剣戟は特になし。まあ視界の端には魔法矢を叩き斬りながら直進している関口は見えるが、それをカットインするような奴は今の所見えない。こっちも後を追いつつ、囲まれない立ち位置を維持しつつ周囲警戒。
『そっちは』
『鉄壁っす、松田の特殊ポーションもうまく決まらないっす』
『エルアル姉妹は』
『全然相手が見つからない』
『なんか、怪しい』
魔法矢の部分だけはやけに強調して居場所を知らせているような気がするんだが、それがわざとって可能性がある。
『ガウェインの奥は?』
『いないですぞ!』
『ヤス、隠密掛けて周辺索敵出来るか?』
『了解っす、姉御はどうするっす?』
『関口の爺のカバーに入る、どうも嫌な予感がする』
今まで戦ってきた感じで行くと、結構王道的な立ち回りをしてくる奴だったんだが、搦手を使うようになったか?どっちにしろ今までの立ち回りと全く違う手を出してくるのは意外過ぎるのだが、今まで散々っぱらやってきた意趣返しって可能性も捨てきれん。
「これは……泥沼の可能性があるな」
トラッカーを使いつつ、関口の後を追い続けるが、流石に深追いが過ぎるか?
『嫌な予感がする、戻って来い』
『待て、弓使いを見つけたぞ!』
簡単に居場所を知らせている?
一人一人釣って倒すというならこれ以上のないタイミングだが、わざわざ高火力のメタリカを差し出すのは博打が過ぎる。トラッカーにも引っかからないし、どういう作戦かわからないのにこんな所で手札を一枚失うほうがやばい。
『ダメだ、戻れ!此処で一枚失うのは痛い!』
『本当にダメか』
『ダメだって言ってる……』
少し熱くなった所、不用意に障害物から出た瞬間、眼前が急に暗くなる。ぐるりと身を捩ると共に、頭半分ほどに当たったのか視界が明滅する。
「よく避けましたね」
「あー、クッソ……そういう隠密するのはこっちの専売特許だろうに」
「兄さんも本気って事ですよ」
視界が揺れる中、目の前にいる犬耳ショタ……ガヘリスの奴を見つつ、ブレブレの銃口を突き出して射撃。バックステップで避けられるが、とにかく距離を取らせるために連射してふらつく頭をどうにか戻そうと呼吸を整える。
「兄さんが言ってました、一番やばいのは謙遜し常に最悪を考えているアカメさんだと」
「それは、光栄なこって……!」
ぐわんぐわんと揺れる頭をどうにかこうにか元に戻そうとしつつ、別の足跡を聞き咄嗟に転がると。立っていた場所がさらに陥没する。おっと、私も知らない奴……ではないな、知ってる顔だ。
「やっほー」
「お前、鍛冶クランのマスターだろうが」
ええっと、名前は、そうカコル。でかい得物振るってくるめっちゃ脳筋タイプのロリドワーフ。
「ガウェインに頼まれて、クランに入ってくれって」
「本気で私のことを叩き潰しに来たって訳だ」
2:1、不意打ちで足元はふらつく。戻って来いって言った関口はメタリカに貼り付けにされているだろうと仮定して、残ったメンバーは、今すぐ来るには時間も距離も掛かり過ぎる。隠密して私を潰してからじっくり仕留めるって流れだったんだろうな。
「オールスターですよ、コネやらなんやらいっぱい使いましたから」
「こういうことに関しては、機転を利かして!」
歪み続ける視界、ふらつく足元でどうにか立ち上がりつつ射撃で近寄らせないようしていくが、接近戦に強い相手をぶつけてくるとは、よくわかってる。
「10人抜きなんてしたら、また負荷掛かってログアウトだな、こりゃ」
無理しないように戦うには相手が悪すぎる。
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