514話 近接パワータイプ

「私に対して警戒しすぎなんじゃないのかな?」


 泥臭い感じにごろごろと転がったり、もう身も蓋もないような間抜けな避けを続けるのだが、負けたら意味がない。恰好がどうとか言ってられないってのはこの事よ。


「一番危険、ですから」

「いやー、私はガウェインに狙えって言われただけだし」


 ああ、もう性質が悪い。接近戦2人だからガンカタを使って捌きたい所だが、ログアウトの危険性がちょっと考えられる……原因は確実に銃操作だろうな。初めて使った時にも精神的な疲れとみたいなのがあったからガンカタと銃操作、対多数の回避行動を考えたり……そりゃログアウトするか。


「あのガウェインの奴が勝負したのはわかったから、どんな奴がいるか教えてくんない?」


 未だふらつく頭を抱えながら囲まれないように射撃をしつつ息を整えるのに集中する。いつまでもパニくってブレブレの射撃しまくってるのは頂けない。弾の無駄だし。


「兄さんとメタリカさんは、知ってますね」

「私とガヘリスもそうだねー?」

「あと6人くらいいるだろーが」


 幸いなことに、鍛冶クランマスターのカコルに関しては大振りなので避けやすい。細かく打撃と魔法を併用してくるガヘリスの方が厳しいので、実質的に1.5対1くらい。油断したらすぐ死ぬって言うか、直撃したら一発で吹っ飛ぶ可能性のある攻撃をよけ続けるのは……そういえばニーナでやってたわ。なので私としては、常に視界内に捉えた状態で私が万全になるまでどうにかこうにか凌いでから攻勢に出たい。


「そうですね……アカメさんの方が付き合いある人がいますね」


 付き合いの長い奴って言うとゴリマッチョ、薫の奴か。ただあいつが戦ってるところを見たことがないし、こういう対人イベントに参加してきた覚えもあんまりない。あー、もうどうしようかなあ。って、こう考えてるとまた負荷が掛かるとかどうとかいうんだろうな。


「お前の誘いを断ったくらいだし、付き合いあるやつ少ないんだよ」


 前にガヘリス、後ろにカコル。まだはっきりしてない状態で突っ込まれると避け切れないので、いつものように銃でメイスの攻撃を受ける。のだけど、やっぱり殴りヒーラーってだけあって下手な攻撃よりも全然強いせいで受けきれない。

 しっかり受けて蹈鞴を踏んで後ろに下がった所に、追撃のカコル。しっかり後ろに振りかぶった状態で勢いよく攻撃を振り始める。一回だけ攻撃を貰ってどのくらい食らうか見ておくのも戦うのに大事、なわけないだろ。

 とりあえずガヘリスに殴られた勢いを生かしてそのままぺたんと尻餅からの仰向けに寝。えぐい風切り音を発している質量の多い武器が目の前を掠めていく。重量と勢いがありすぎて、武器に振り回されるのも気にせず、でかいの放り込んでくるのは性格なのか、諦めなのか。


「こっわ、えぐすぎでしょ」


 多分だけどStr極にしてる上で、あの振り回され方ってのを考えると相当な重量武器か。両手持ちでStr1.5倍なんて仕様なくてよかった。勿論だけど振りぬいて、文字通り振り回されている所に射撃を入れると、しっかりガヘリスがそれをカバーするために魔法での障壁を作って防御までしてくる。

 なんていうか、向こうも急造で作ったメンバーだと思ったけど、それをカバーする組み合わせと立ち回りを元々ガウェインの所にいる奴がカバーしている、って感じか。

 とりあえず向こうの体勢が整う前に後転からの立ち上がりからマガジンを手首のスナップで弾き抜いて、新しいマガジンを入れ直して距離を取る。


「あんまり振り回すとダメですよ」

「これしか出来んからー」

「不器用な奴だ」


 軽口叩き合いながら戦闘出来るってのを考えれば、まだ余裕はあるな。殴り系だからそこまでMPが多くないはずだけど、ガヘリスもこのゲームにおける高レベルクランの一員ってのを考えたら、普通って定規で測るのは危ないはず。

 結局のところ、油断しないで攻撃を貰わないように気を付けてなるべくノーダメージで2人を裁いて倒すってのが一番良いんだけど、言ってて無理くせえ。


「煙草を付ける暇すらないわ」


 いつもだったら此処で一服して楽しめるんだけど、そんな余裕は全くない。ちょっとでも気の緩んだ事をしたらコンビネーションであっちゅう間に持ってかれる。近接パワー型の奴が多すぎん?これで幽体攻撃してくる奴なんて出てきたら本当に厳しいんだけど?


「それだけ本気って事、ですか」

「本気じゃなくて追い詰められてるってこったよ」


 ふらつく足元はしゃべったりなんだりしていたら大分回復したから、ここからが本番ではある。が、そのまま戦えるかって言われるとやっぱり2対1は厳しい。関口の爺さんがメタリカを叩斬って、こっちに合流してくれれば勝機はあるはず。あとはヤス達がどんな感じに戦っているかも問題か。


「まさかとは思うけど、私だけピンポイントに狙う作戦じゃないだろうな」

「地下からず遠からずだねえ」

「カコルさん、それはちょっと……」


 アホの子で良かった。

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