505話 強敵
立ち上がりはゆっくりと、距離とタイミングを計りながら牽制射撃を繰り出しながら様子見。遠距離攻撃が強い……のは双方違いないので、飛んできた射撃攻撃はそれぞれ、こっちはガンシールドで、向こうは体をよじったり大きい拳銃の方で受け流す。
「どう見るっす?」
「忌憚なく言えばアカメが不利じゃ」
「その心はなんですかな!」
「覚えて練習していたとは言え、向こうのほうが練度は高いじゃろう、それに此処に合わせて殆ど動いてないのも、気になる」
「勝てるかな」
「どうだろう」
後ろのギャラリーは気楽でいいな。
そもそも向こうのほうが接近戦に特化しているから私のほうが不利ってのはよく分かってる。だからこそそこを突いて前に出なきゃならん。どこまでリスクを取って前に出れるか。これがあいつとマイカを相手にしているときに分かった事なのだが、問題はそこに飛び込むタイミングよ。
「どっちも2丁拳銃だし、弾切れはしないでしょ」
「この弾切れしなくなった環境を作ったの誰だと思ってるんだ」
てめえが使ってるガンベルトもマガジンも銃弾も全部が全部私が四苦八苦して作ってきた奴だろーに。あー、そう考えたら私ってガンナー職の貢献がえげつねえな……いや、私以外の奴もあれこれ作ってるんだろうな。私だけがガンナーやってるわけ……いや、一時期サブ職でいいって言われて絶滅してたか。
「つーか、ガンナー増えすぎなんだよ」
「それはボスのせいもあるでしょ」
中距離での撃ち合いから、急に連射をかましてくるのでステップとガンシールドで防ぎ、こっちも反撃。と思っていたら一気に距離を詰めてくるので体勢を整え、真正面で捉える。まあ突っ込んでくる相手に対しての基本行動。流石にマイカみたいに極振り……ってのは難しいから、私でも捉えられる速度なのは良い。だとしても無策に突っ込んでくる訳がないのでしっかり射撃を入れてこっちに攻撃をしながら近づいてくる。
「しっかりした立ち回りだな」
「スパルタが多いからだよ!」
半身になり、ガンシールドで射撃を防いでいればかなり懐に潜り込まれる。ただ、これに関してはどっちから先に行くかって話でしかないので、問題はない。結局のところ足の速い相手に遠距離攻撃を繰り出したところであまり意味がないし、元から接近戦をする相手に対してこっちも接近戦する気だから問題なし。
連射からの接近、そして至近距離で撃たれる……瞬間にこっちから相手の銃に対して拳銃のグリップ下部をぶつけて射線をずらす。明らかにこの攻撃で先手を取ろうと考えていたももえから舌打ちが聞こえる。これくらいはしてくるってわかるだろうに。
そこから射撃……ではなく、格闘攻撃の応酬が始まる。と言っても相手の銃口をこっちに向けさせないように攻守が入れ替わりながらの近接戦闘。
「マジでガンカタ覚えてるじゃん!」
「努力家でね」
「まー、あんだけボコられりゃ!」
あのスパルタ修行は確かにえらい数をボコられまくったが、それだけじゃないんだけどな。とりあえず先にどっちが銃弾を当てるか、そういう勝負になる。
「それでも、こっちの方が熟練してんの!」
「こういう時こそ落ち着いて行動せえ」
拳銃同士のかち合いから蹴りを含めた格闘術で攻めてくるのだが、それを拒否するように軽く引いて射撃を合わせて立ち位置を計りながらこっちの間合いで戦うのを強要させる。この戦いは、どっちが自分のペースに引き込めるかがポイントよ。私としてはあまり格闘戦に引き込まず、接近戦から中距離で射撃戦をメインにした立ち回りで最後に仕留める、そんな流れで行きたい。が、そういうのを押し付けられるレベル差かって言われると難しい。
「もー、ちゃんと付き合ってよ!」
「してるだろうに」
とはいえ、距離が開いたら向こうも射撃をしてくるので、その分のリスクはこっちも取っている。ガンカタばっかりのアホ……ではなく、しっかりと中距離の撃ち合いも出来るのは、私の煙草を撃ちぬいた時点で出来ることが分かっている。ガンカタ使っての接近戦なら向こうのほうが有利なので、中距離と短時間の接近戦ならイーブンじゃないな、こっちが有利を取れる。
「位置取り考えての立ち回りは頭使うから疲れるわ」
攻撃に出るところを間違えるのが一番やばい。それぞれ射撃攻撃を上手い事、直撃されないようにしているからどこかで均衡が崩れれば一気に流れが変わっていく。しかしいつまでたってもこんな不毛な撃ち合いをしても決着はつかないわけで。
「もぉー……!」
よしよし、だいぶイラついてる。いや、ブラフか?どっちにしろ慎重に立ち回るのは変わらない。油断も慢心もしない。確実に分かっていることは一つよ。
「私もほかの連中も認めるくらいに、強敵だって事だな」
装填する隙も図らないといけないのはちょっと大変だが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます