504話 宣戦布告

 2回戦目は、特に何かあるわけでもなく、あっさりと突破。初戦にヴェンガンズとやったのもあって、消化不良だった連中が暴れ、分断されることもなかったから理想的な動きとして片付けられた。そのうえであんまり私も前に出ることがなかったので十兵衛とやった後に起こった震えも特になし。本当に、何にもない相手ってのも久々だった。

 一つだけ言えば人数が多くて包囲されそうになったくらいか。ただ、全員が全員レベルが高いわけじゃなかったので一点突破で包囲を抜けて、そこから反転攻勢、無し崩れになった所を潰すってだけの感じになった。


「なんて事が続けばいいんだけど、此処で当たるとはなぁ……」

「知り合いかね」

「……私が軽はずみで手助けしたらとんでもなく強くなった奴」


 3週目、3回戦の相手は毎度お馴染み、ぽんこつピンクのももえ。

 ずらっと、まあかなりの数がいる……と思ったら一人だけだった。


「ボース、タイマンしよう、タイマン」

「前にもやったろーが」

「いいや、これが最終決戦でしょ、ガンカタ使いとしてもガンナーとしても、私は一番上が欲しい。でもボスとしては、下のガンナーに舐められるわけにはいかない」


 折角の団体戦だってのに私を狙い撃ちにしてくる奴、多くないか?

 そりゃ、自分が集めた連中、知り合った連中はT2Wにおける、それぞれのエキスパートだってのはわかるけど、それにしたって目の敵にしすぎだろ。


「他の連中は」

「一応後ろにいるけど……これは私のクランだから」

「納得してるのか、そいつらは」

「まあねー」


 自分のキャラというかどういう立ち位置かよくわかってる自分のやりたいことのため、面子やらを集めて結果、一番楽しい事を選択できる。そういう事を出来る立場ってのは私もそうか。


「嫌って言ったら?」

「ん-、ボスは嫌とは言わないだろうね、そういう相手だもん」


 全く、よくわかってるわ。


「どうするっす?」

「今襲ったら勝てる」

「うん、勝てる」

「勝ちを拾うのか、自尊心を取るか、どうするんじゃ?」

「卑怯で行くのか、王道で行くのか大事な選択ですな!」


 そもそもこんなところでやらんでもいいだろうよ。闘技場で後でひっそりやればいい……わけじゃないな。此処だからこそ、やる意味があるんだ。つまるところ、オフィシャルでどっちが上かを決めたいわけだ。


「あー、分かった分かった……お前らは手を出すな」

「やりぃー、ボスのそういう所好き」

「ある意味で師弟対決か」


 ここ最近、たまたまだけどぽんこつピンクの配信動画を見てたりもした。最初はクソ職ガンナーってふざけてたってのに、今じゃどっぷりガンナーしている。私を追いかけてきて、独立して、私と同じくらい強くなって、私の目の前に立ち塞がる。


「じゃあ、こっちね」


 言われて付いていった所、ももえのクランメンバーがしっかり整地をしたうえで、後ろでゆったりと楽しそうに眺めている。


「じゃあ、行ってくる」


 その反対側でこっちのクランメンバーも座って観戦を始める。

 流れ弾を気にしないのかこいつらは。


「公式の場で、配信したうえで、しかも大きいイベント……ここでボスを戦ってみたかった」

「そろそろ親離れをしてほしいんだが」

「憧れに追いつき追い越したいって感情なんだけど」


 二人揃って得物を抜いて一息。

 装備に関しては期間が開いたけど、特に変わっていないし、使い勝手も大丈夫。ガンシールドだけは少しだけ弄ったが、大きい変更もなし。殆どがガンカタを覚えるときに戦った時と変わらない、それに引き換えももえの奴よ。

 左右で大きさの違うハンドガン、体のラインが見えるようなパイロットスーツ。ハーネスも装備してあるし、私のように肩掛け、腰巻きのベルトのように遊びがあるようなものでもない。アニメやゲームでよくあるSFアーミーの様な感じに仕上げている。このゲーム、メインの世界観はファンタジーだった気がするんだけど?


「此処でお前に花を持たせるってのも良いんだろうけど」


 何時ものように煙草を取り出し、咥えて火を付けようとすると、銃声が響く。


「そんな気、使わなくて良いって」

「本気の本気で叩き潰してやる」


 咥えた煙草の先が焦げ、燃えて、紫煙が燻る。ももえの奴が跳弾か曲撃ちで私の煙草の先を撃ちぬいたわけだが、こういう芸当をするとは。


「最後の一服はしっかり味わってからで良いよ」

「……やっぱりあの時、お前を見つけて良かった」


 此処まで心躍らせてくれるとは思っていなかったからな。

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