457話 爆弾処理班
「兄さん、アカメさんは起爆剤にしては強烈すぎじゃ」
「私のクランにいるのであれば、最低限の動きはして貰わないといけませんからね」
「そんなに気にする事?」
「仮にもボスを率先して倒し、イベントで上位に食い込もうとするくらいにはガチでやってるじゃないですか」
「確かにそうだけど……アカメさんだよ?」
「だから良いんですよ、だから」
にぃーっと犬の口端を上げて笑いつつ、ガヘリスに楽しまないと損だろう?と言った感じに顔を向ける。ああいうタイプは自分の勝負事には死ぬほど厳しいが、意外と教えるのは上手だったりする。大体ゲームの上手い人はしっかり自分がどう立ち回っているか説明できるもんでもある。だからこそ自分のクランのレベルアップにもつながると思って声を掛けた……のが建前であって、独立したという話を聞いた時に、抱え込もうとずっと決めていたのは秘密だ。
「絶対後悔すると思うんだけどなあ……」
我が弟、ガヘリスは相変わらず心配性だ。ああ見えてもしっかりした人だしそこまで酷い対応はしないだろう。
何て事を思っていたのが十分ちょっと前。
いきなりアカメに呼ばれたので向かってみると明らかにいつもの不機嫌な状態でクランハウスの一室に座っている。
「あいつらどういう教育してたん?」
「と、言うと?」
そう聞いてみるといつも以上に重たいため息を吐きだしてメニューを開いてこっちに見せてくる。
「一通り実力を見たけど、ほぼ全員が並、並過ぎて面白みの1つも無いわあいつら。FPS、TPS齧ってた奴もいたけど、動き方が雑だし撃ち方も弾があるからばら撒きまくるしなんなん?」
なんなん?と言われても何とも言えない。何がどう不満なのかが問題なのでそれを聞かない事には……。
「それで何が不満点なのか」
「とにかく銃をぶっ放せばいいって根性が気に入らん」
ゲームなんだから良いだろう……と、思ったのだが、たった一発の重みがどれほどの物か、T2Wの中で一番理解しているのがこの人だった。とは言え自分であれこれ色んな情報を流して銃弾や火薬を流通させたと思ったんだが?
「だから先に聞いておく、どこまで仕上げて欲しいんだ」
「……どこまで、と言うと?」
「ガンナーとしての立ち回り含めて上から下まで仕上げた奴か、適当に使い物になる程度にさせるのか、お前が決めてそれぞれに話せ」
それをしない限りは動かないぞ、と言った感じに椅子にもたれてじろっとこっちを見てくる。こうなったら梃子でも動かないのは知っている。つまるところ私がやる事としては、自分のクランメンバーに何処までやるか決めた上でそれをやるかどうかを聞いて、それをアカメに伝えなきゃならない。それは良いとして、どういう教育をするかが問題だ。
「そういいますが、どの程度仕込むんですか」
「ガンナーとしてのちゃんとした立ち回り、雑にばら撒いて倒せるなら馬鹿でもできるでしょ」
「中々に過激な発言ですね」
「近接戦も出来て、1人で複数の相手を捌けて……つまるところ私と同じ所まで鍛える」
アカメがアカメを量産するって事なんだろうけど、それはそれで何か危険な感じがある。流石に引き抜きしたり独立を促すようなことはしないとは思うが……言いようのない不安がよぎる。
何度か同じパーティになったり、戦闘している所を見てきたが、あのレベルで動けるようになったらそれはそれでボスだったり、敵のレベルが高い所にも行けるようにはなる。メタリカの様にMP消費前提での高火力が、通常攻撃で高火力後衛を並べられるのも大きい。
ただ、そこまでやるのに何処までスパルタを掛けるのかって話になるので、私の返答次第では抱えているガンナーが全員きつくてやめるって可能性が低い……いや、高いか。
「で、どーするん、やる?やらない?」
「……ちょっと考えさせてくれ」
「追加料金は要求しないでおくわ」
これは、何と言うか、自分から爆弾を抱えてそれを処理している感覚だ。
色々と難しい問題を抱えてしまった気がする。
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