213話 結局のところ

 あれからあの魔法使い連中には嫌と言うほど銃弾や攻撃を受けて貰い、二度とうちのクランに横槍を入れて来ようとは思わないだろう。

 それにしてもだいぶ痛めつけた気がするな。


 マイカはあの強化をいきなり使って、機体諸共蹴り飛ばした上で空中で連続蹴りをしたり、浮かせた相手を追撃したり、格ゲーの様な動きで翻弄。

 ニーナに関してはただ単にあのでかい大剣を思いっきりぶつけて叩き落とすと言うシンプルな攻撃。

 バイパーとももえに関しちゃハチの巣……いや、ミンチだな。銃身が赤くなるほどの手回しで銃弾を撃ち込みまくり、ももえは早速アカメのやり方を真似してくるくる銃を回したりしていた。

 儂に関しては捻りを加えた突きによる一点突破、不死身の男が使っていた強力な必殺技の再現だな。流石に二次職専用のスキルを使う程ではなかった。


 とにかくこれでもかと言うくらいに攻撃をし続け、ひたすらに叩き潰し、相手の心をばっきばきにへし折れる程の猛攻っぷりであった。

 それでもやはり魔法での反撃は合ったので多少なりと被害は出たわけだが、そんな事は知ったこっちゃねえと言う感じで被弾しながらも攻撃した上で、バイパーの奴は止めにと200gパイプ爆弾で吹っ飛ばしていた。

 流石にあの200gパイプ爆弾に関しては引くレベルの威力ではあったのだが……その前にアカメが見せたあのファイナルウェポンショットか、あっちのインパクトが強すぎたな。

 あれのインパクトは凄まじかった、そもそも発動条件が分からないが、多分相当厳しい条件の浪漫スキル何だろう。ちょっとどれくらい食らうのかは興味があった。




 とりあえずそんな事があり、考えていたらゴールに近くなってきたのか小競り合いが大きくなってきた。

 最後の最後に全員蹴散らして少しでも順位を上げると言う事だろう。


「さて……アカメはしょうがないとして、儂は今からお前らを倒す」

「ほーん、やるきぃ?」

「ボスは、まあしょうがないが……クランの格付けにはちょうどいいな」

「十分やってきたと思うんだけどなあ」

「ああ?ビビってんじゃねえぞポンコツピンク」


 誰がポンコツピンクだ!と叫んだところでもう一つ「あっ」と声を上げる。


「ああああ!思い出した、序盤で吹っ飛ばしたのニーナさんじゃないですか!」

「吹っ飛ばした相手何て覚えてねえよ」

「言ったなこいつぅ!」


 ずるっとすぐに銃を抜くとニーナへ容赦なく銃撃をし始める。散々アカメに撃たれたのもあってか大剣をうまい具合に構えて防御、受け流す動作が良くなっている。


「てめえのへなちょこ弾に当たる訳ねーよ、ばーか!」

「防御と大振りしか出来ないくせにぃー!」

「あぁ?もっぺんいってみろ、おらぁ!」


 そりゃあもう醜い言い争いをしている横で弾いた銃弾が掠める。全く、もうちょっと言葉遣いに気を付けて戦う事は出来ないのか、こいつらは。


「んじゃあ、まあ、纏めてくらいやがれ!」


 バイパーもするっと横にずれ離れると手回しガトリングを発射し始める。

 それを予知していたのか全員がニーナの後ろに回って銃撃を避けつつ、壁扱いする。


「おい、こら、お前ら!」

「やーい!やーい!」

「子供だ、子供」


 ガトリングの防御をしているせいで手が塞がっているので反撃出来る訳もなく、この状態は相変わらず防御一択になってしまうな。

 さっきまでがんがんやり合ってたニーナを盾にももえはバイパーと撃ち合いをするわけだが。


「とーう!」


 マイカがその背中をニーナとももえごと蹴りを入れてバイパー側に吹っ飛ばす。

 うむ、何と言うか、非常にカオスだな。


「いっだぁ!?」

「ジャンキー、てめえ!」

「こっち寄ってくんな!」


 金属音と銃声と打撃音、ついでに暴言が飛び交ううちのクランを少し遠巻きに見つめながら「はぁ」っと大きめにため息を吐き出す。

 蹴りを食らわせるのは良いと思うが、やっぱり背中ががら空きだぞ。

 蹴りを入れて接近戦でももえに膝を入れているマイカの背中を思いっきり斬りつける。


「んが、十兵衛ちゃんも参戦じゃんかぁ!」

「倒すって言ったろ?それに全財産は勝った奴の総取りじゃないか」

「そういえば幾らなんだっけか!」


 4人団子になった所を接射ガトリングの銃撃で距離を開けながらバイパーの奴が聞いてくる。

 確かにそう取りで幾らってのはざっとしか無かったな。


「俺様が200万」

「あたし40万」

「私は10万かなあ」

「俺が100万」

「合計500万ってとこか」


 ちなみに全財産なのであれから売り上げが伸びたおかげで150万の賭け金だったりする。

 それにしても500万か、全員分かき集めた所でアカメの奴がほぼ1人で投資した額にも満たしてない……うむ、やはり頭おかしいな、あいつは。


「一攫千金!」


 そう言うとももえが急ブレーキで団子状態から抜けて、こちら4人に向かって銃を連射。そういえばももえは手数を重視と言う事でオートマチックを持っているのだが地味に銃本体とマガジンの数を増やしているな。

 

「500万もあってもあたし使い道ないんだけどねぇ?」


 飛んできた銃弾に合わし、マイカがレガースで弾く様になってきた。こいつもこいつでやる事が人間離れと言うか、システム的には可能だけど難度が高い事をする。

 

「だったら、脱落しておけばいいだろうに」


 弾いてる所を文字通り横槍を入れて直撃するように仕向け、弾き損ねたのが何発か当たったのかまた文句を言いながら槍先を蹴り上げられる。勿論すぐにそれを引き戻して距離を取りつつ、全体の動きを見てどうするかと考える。


「散々人の事盾にしておいて総取りとかふざけんなよ!」


 向こうは向こうでガトリングの掃射を防ぎきると一気に接近し相変わらずのパワープレイ、しかしそれでもガトリングの銃口を塞ぐことに成功している。

 なるほど、盾持ち相手にはガンナーは滅法弱いと言う事だな。盾でなくても単純に遮蔽物さえ維持できれば攻撃力分のダメージは入らないので固定ダメージが無視できる。

 ガンナー抱えてるこのクランの天敵がクラン内にいるとは……しかも木工職人だし。


「あー、てめえ、修理するの大変なんだぞ、これ!」

「知るかよ!」


 使い物にならなくなったガトリングから手を離すとアカメが使っているリボルバーと同型の物を引き抜いて接近してきたニーナの機体の方へと撃ち始めている。

 本体に銃弾が利かないなら機体を狙えばいいじゃない、と言う事だろうな。


「十兵衛ちゃん、楽しそういつも見てるよね」

「ん、ああ、そうだな、自分の子供が増えた感覚だな」

「えー、リアル爺なのー?」


 そう言いながらも攻撃してくるあたり、性格が悪いぞ。勿論黙って攻撃を受ける訳もなく、槍で受けて反撃の叩きつけや切り払いで距離を取りつつ、接近させない。


「暇を持て余した爺ってのは間違いないな」


 ふふっと笑いながらマイカの攻撃を捌き、たまに飛んでくる銃撃を受けながら5人で代わる代わる相手をしつつ、ゴールへと進んで行く。


「500万寄越せおらぁ!」

「てめえ、木工で稼いでんだろうが!」

「配信させろー!」


 やんややんやと3人でやり合ってるのを眺めつつ大きめにため息を吐き出しなつつ、マイカへ捻りを入れた突きを繰り出す。


「うわ、いっだぁ!?」

「流石の儂も好きに出来る金と言うのはゲームでもほしくてな」

「くそー、やってくれるじゃんかぁ?」


 マイカが突きや払いの攻撃を避けてから、一呼吸入れると足にばりばりと雷のようなオーラが出現する。何か色々と強化できるスキルが揃ってるな、こいつは。


「あたしは別にいらないんだけどぉ、アカメちゃんにあげちゃおっかなーって?」

「本当は普段使えないスキルを使いたいだけだろう」

「えへー♪」


 そう言うやいなやホバーボードを持っていた縄で自分に括ると、自力で走り出すのだが……速度が機体に乗っている時と変わらない。

 移動速度強化系のスキルは初めて見たが、全体的に雷のイメージがマイカにはあるみたいだな。


「消費激しいから好きじゃないんだよねー、これ」

「そう言いながら突っ込んでくるあたりがお前さんらしいよ!」


 腕を大きく振りながら、こっちに接近して飛び蹴りをしてくるので槍で受けて押し返すが、そのまま空中で捻りを入れて此方へ連続攻撃をしてくる。どれだけアクロバティックに動けるのか不思議だよ、全く。

 槍で受けて押し返すと、その反動で上に飛び上がるので早々に受けられないので攻撃に合わせて攻撃を繰り出して叩き落とす戦法じゃないと立ち回れず、槍と言う点で接近されると射程が噛み合わない。

 

「クラン同士の潰し合いになると相性がはっきり分かれるな」

「そうー?」

「あまり接近されると攻撃がしにくい」


 こんな事なら剣術も覚えておけば良かった。SPに余裕が出来たらちょっと考えておこう。

 そして今はそんな事よりも、マイカの猛攻を防ぎつつが難しい。押し返して距離を取った所で、あの移動速度強化でこっちに向かってがんがん飛び蹴りをかましてくる。

 効果時間の短い時限強化をたくさん揃えていると思って相手しているのだが、それもなく、未だに背中にはボードが提げられている。


「アカメちゃんは勝ちだけどあたしはいろんな戦い方で楽しむのが大きい違いなんだけど、ねぇ!?」


 こっちに向かってきている途中、大きい爆発が起こって儂の頭上をマイカが通り過ぎて吹っ飛んでいく。流石に着地が難しいと感じたのか空中でボードに乗って軟着陸している辺り、身体能力が高いな。

 そしてその爆発に関してだが、バイパーとももえ、共に銃弾が切れたのか持ってきた爆弾を手当たり次第に投げあっている。で、投げている爆弾をニーナが大剣で打ち返したり……周りの迷惑とかを考えないのかあいつらは。


「おら、食らえ!」

「コースが甘いんだよ下手くそ!」

「きぃー!」


 投げ込まれたパイプ爆弾を大剣の腹で思い切りかっ飛ばし、別方向でまた爆発。これは次のイベント辺りで修正されるだろう。


「いったぁ……ももちゃん、こっちに爆弾なげえー!」

「え、あ、はい!?」


 ぎゅんと速度を上げて向こうに合流すると、ももえが声の掛かったマイカの方へとパイプ爆弾を何気無しに放り込む。


「足に雷をまとわせたままあれを蹴るとどうなるんだ」


 飛んできた爆弾を一旦膝で受けて進行方向の上空に打ち上げてから、ホバーボードから飛び上がってそのままオーバーヘッドシュート。

 蹴る瞬間に一旦ストップモーションが入ったり、なんだったら必殺技の字が出てくるんじゃないかって思うくらいには絵になっているな。勿論投げるよりも高速だし、もともと蹴り技主体のマイカがやっているのもあって弾と変わりない速度で地面にめり込み、爆発。

 土砂と土煙を大きく上げ、辺りに土の雨を降らせる。


「おい、あいつに打ち返せ!」

「バトルジャンキーは引っ込め!」


 まるでトスバッティングの様に軽く前に投げた爆弾をニーナが思い切り打って、ライナー弾道の爆弾がこっちにやってくる。


「なんでもありだがやりすぎじゃないか!」


 飛んでくる爆弾を見据えて突き一閃。流石に導火線を切る何て芸当は出来なかったので突き刺さったままの爆弾をそのまま他プレイヤーの所に放り込んで爆破処理。


「爺さん、悪い奴だな」

「もうちょっと加減してやれよ」


 ゲラゲラと笑っている向こうの二人。お前らさっきまで喧嘩してただろうが。

 

「ももえ、爆弾寄越せ」

「え、うん」


 ぽいっと投げられた爆弾を槍で打ち返し、ゲラゲラ笑っている2人の方へと。そこからニーナがまた打ち返し、戻ってきたのをまた打ち返してからの何度かラリーをし、その後に撃ち損じた向こう側で爆発が起こる。

 

「けほ、えほっ……!」

「おら、やり返せ!」


 向こうでもまた爆弾に火を付けて、こっちに打ってくる。

 一気に不毛な争いになってきたな。

 



 しばらく爆弾の応酬で周りの地形は変形するわ、他のプレイヤーを巻き添えにするわ、これが対人じゃないコンテンツだったら、ただ単に迷惑行為をしているクランになるな。

 とにかく投げて打って、爆破して、怒声や叫び声を上げながらゴール前最後のストレートコースにやってくる。

 1個だけ期待していたのはアカメの奴があそこから追いついてきて、また何か面白い事をやらかしてくれると思っていたのだが、流石にあの位置でやられたら復帰するのは難しいか。

 此処でクランチャットでどこにいるか聞いても良いのだが、それはそれでアカメが拗ねてきそうだ。


「流石にこれないか」

「んー、アカメちゃん?」

「この状況をみたら、一癖も二癖もあるうちのクランのボスを務めているってだけで涙が溢れるよ」

「そうかなぁ、類友じゃないのぉ?」


 移動速度強化のスキルも終わり、ホバーボードに乗りつつ、接近しては攻撃して、離れる小賢しい戦法に切り替えてきたマイカを相手にしつつ、多少なりとある寂しさを感じる。


「やはり締まらんな、あいつがいないと」

「そう言ったら大体来るんだよね、アカメちゃん……って……?」


 本当に来てるっぽいな。

 後ろでぼんぼんと連続した爆発音をさせ、土煙と爆発炎を巻き起こしながら少し離れた所の後方からぐんぐん加速している奴がいる。

 

「……期待以上の、斜め上の事をしているな、相変わらず」

「どうするぅ?向こうに行って一発喧嘩売るぅ?」

「そりゃな」


 当たり前だろうと言う事で、向こう側でついに爆弾すらなくなって銃自体で殴り合いをしている3人を呼んで文字通り爆走している音の方に向かう。


「これがイベント最後の戦いだな」

「後で覚えてろよポンコツピンク」

「お前はガト壊しておいてほざくなよ」

「思い切り顔面殴ったの忘れないですから」

「仲がいいなぁ、うちのクランは」


 喧嘩する程、仲が良いと言うのは分かるが、やりすぎだぞ。

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