138話 特にPRはしていないから
しばらく3人であれやこれや話したうえで解散し、私は私で先程の交換したいと言ってきたプレイヤーと再会を果たす。それにしても今日中って言った割には早い事用意してきたな、多分露店で売ってるの買って手持ちの物と合わせたんだろう。
そういや4個持って来られるとやばいので私の露店からさらに10個火薬を取り出して60gの手持ちに戻している。
「案外早かったわね」
「とりあえず4個持ってきた」
「んじゃー、向こうの路地で」
二人で露店街の路地に行ってトレード画面を開く。そういえば昔は先渡し詐欺なんてあったな。あんなの引っかかるやつがアホだと学生ながらに思ってたわ。
「うわ、本当に火薬60gあるわ……」
「硝石4個も確認、んじゃ成立っと」
トレードも相手と自分が承認して初めてそこで成立、これが通常のトレード方法。
いつも私がアイテムのデータを投げ渡しているのは行為的には捨てると変わらない。
『それで、有用スキルって話ね。情報がまだ出回ってないと思うけど、スキル自体は「ボマー」ね』
『……え、そんなのあるん?』
『取得方法は……』
少し前に考えた状況整理からの推察の物を話していく。1つだけ違う様に言ったのは、私がガンナーと言うのもあるので、そこの補正で緩くなっているかもしれないと言う点だけ付け加えておいた所か。
『うーん、それでもボマーって微妙な気がする』
『この間のイベントいた?』
『え、まあ……』
『あの最後のでかいゾンビの膝を吹っ飛ばしたって話聞いた事ある?』
『グループ1位の所の話……え、あれ?』
『あれ吹っ飛ばしたのボマースキル無しよ』
『それであの威力?』
頷きながら手に入った硝石を4個を黒色火薬へと手早く錬金で生成。これで60gのプラスになるって言うんだからぼろい商売取り引きだわ。
『こんなのもあるわよ』
コートの裏に仕込んで置いた火炎瓶をちらりと見せる。勿論だけど、そんな物って顔で見てくるわけだが、二度見してから食い入るように見てくる。サービスショットは此処までと言う事でコートで隠してからまた一息。
『まだ量産は出来てないけど、これも爆弾って扱いに入るみたいだし?』
『色々情報過多すぎるからちょっとタイム』
漫画とかなら頭から湯気が出たりするんだろうな、しばらく空を眺めながら深呼吸している様を眺めながら煙草に火を付けて一服。
「そういうわけで、次からは3個で60gね」
「って言うか、このレートで良いんか」
「まあ、私が納得してるから?」
「ならいいですけど」
「なんなら私が交換した火薬を、あんたがさらに硝石と交換して、また私に交換してもいいわけだし?ただ私の邪魔をしないって条件はあるけど」
「酷いマッチポンプだ」
やるなら黒色火薬60gの内、30gを出して硝石3個で交換だな。で、その3個の硝石を私と60gで交換。
なんかわかりにくいけど、今取引してるプレイヤーも私も30gずつ儲けが出るわけだから何一つ悪い事はない。
「不利益になる事は何にもないからいいのよ、まあ傍から見たらネズミ講だけど」
「垢BANだけは勘弁願いたいんですが」
「露店システムとかマーケットのあるMMOじゃこんなの序の口よ、なんだったら買占めからの不当釣り上げとかあるわけだし」
「まあ詐欺ではないけど」
「あんたは火薬が増える、私は硝石が増える、見ず知らずの奴も火薬が増えるって言うWin-Win-Winでしょ」
紫煙を吐き出して一息。
これでとりあえずの取引は完了したし、ゴリマッチョの所にでも顔出して進捗聞いて、後は犬紳士の連絡を待って、だな。
「じゃあまたよろしく」
「こっちこそ」
路地から出てアイテム欄を確認。結果として黒色火薬が60g増えているわけでほくほく。これで40発分の銃弾を作れるわけだし、私がいちいちロックラックを狩りに行かなくてもいい、なんだったら火薬と爆弾の需要が増えて取引増えろ。
それにしても最近こんなんばっかりだな。
何かしらイベントがあったりすればそっちに力を入れようと思うけど……確か次のイベントって対人するとかどうとか言ってた覚えがあるな。
『アカメちゃん、頼まれたの出来たわよぉ』
『早くねえか』
『うちのVIP会員様の特注だからぁ』
『どこにいる?そっち行くわ』
『お店にいるんだけど……裁縫ギルドの所なのよねぇ、あたし達のお店って』
『わかった、向かうわ』
コールを切ってすぐに裁縫ギルドの方へと出向く。
そういえば相変わらず露店の囲い込みに関しては行われていたのでばっちりSSは取っておいた。証拠ががんがん溜まっていくんだが、後で復讐されるとか思わないんだろうかね。
T2W運営のフットワークが軽いってのも結構周知の事実なのに、よくああやって大っぴらに迷惑行為が出来るもんだ。
何にせよ、他の奴らが通報するまでは持ちこたえてくれよ。
「何か言う事おかしいな……」
妨害行為されてるのは私の方なのに持ちこたえてくれってどういう事なんだ。直接的と言う訳ではないけど、断罪するなら私の手で大っぴらにやりたい。
さて、これからの事を考えながらエルスタンをだらだらと歩きつつ、ガンナーギルドの捜索もしながら辺りを見回るが、特に何にもなし。
トラッカーでも使ってNPCの足跡でもたどれば見つかったり……いや、見つかるんじゃねえの、これ。とは言えエルスタンの大きさから考えてある程度狙い撃ちするか絞り込んで探さないと難しいのはあるけど、これが正解なんじゃないか?
銃弾作ったときから探そう探そうと言い続け、いまだに探していない結構重要な要素。
「でも、まあ全部片付かないとできないわ」
裁縫ギルドの3件ほど隣にある3階建てのでかい建物。看板と言うか入口には装飾過多の看板が掲げられ、とにかく目立つ上に色彩がとにかく派手。
「飲み屋の看板じゃねーんだぞ」
「いい看板でしょ?」
「例の服は?」
「出来たわよぉ、防御性能もあるし、見た目もいいし、完璧よぉ?」
「いい仕事するわ」
店の前で延々と立ち話をするわけにもいかないので中に入って、売り場になっている1階でやり取りをはじめ、現物を見る前に10万Zの硬貨データを手渡して防具を寄越せと手を出す。
さっき言った先渡し詐欺とかお前考えてないのかって言われそうだが、これに関しては知れてる相手同士でかつ、相手の事を信用しているからこその行為だ。
ゴリマッチョだって硬貨データの中身を確認せずに懐に入れ、防具を此方に渡してくる。
名称:パンツスーツ 防具種:衣服
必要ステータス: STR5 DEX5 AGI10
防御力:+20
効果:衝撃耐性(中)斬撃耐性(小)魔法耐性(小)
詳細:一般的にビジネススーツとも言われるもの
:内部素材に革、金属糸等を使用している為、要求ステータスが高い
製作者:薫
「いい腕してるわ」
「ふふ、ちょっと殺し屋の映画とかみたら、作りたくなったから丁度良かったのよぉ?」
「防弾ジャケットみたいなの目指したいんかい」
「まぁ、防弾は意味ないから……革素材で耐衝撃、金属繊維で対斬、対魔ってとこかしら」
「ガチ勢こえーわ」
そんな事を言いながら受け取ったパンツスーツをするっと装備。いや、まあ、任せるとは言ったけどこれはどうなのよ。
「暗い赤色ってどうなの?」
「いいからいいから、今着てるコートを袖通さないで肩掛けのマントみたいにしたらいいのよ」
「まあ、注文付けたの私だから着るけどさ」
HTML的に#8b0000ってとこだな。所謂ダークレッド。
これ大丈夫か、アメコミの社長のパチモンみたいな感じとか、左手に銃を持っている伊達男みたいな感じにならんか。
「最近煙草咥えてイメージ付けてるのもしってるからねぇ?こういうのは目立ってなんぼじゃないのぉ」
「最も過ぎて何も言えねえわ」
「今のキャットスーツより良い物使ってるんだから、いいじゃないのぉ?」
確かに良い素材使ってるだけあって防御力は高いし、効果は高い。……目立つけど。
「だとしてもよくこんなの作れたわね」
「うちのクラン、結構あなたのファン多いのよぉ?」
ちらちらと此方を見て満足げにしている店員という名のクラン員を発見して納得する。アバターや服、防具を可愛い系で攻めたけど、やっぱりカッコいい系の服も見たくなったって所か。
「私系統の男キャラでもいいんじゃないの」
「美少年やイケメンは多いわねぇ……でもカッコいいのベクトルが違うのよ?」
「そっちのPRはしてないからな」
そういうとこって言われるけどピンと来ないっての。
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