110話 私は天才だぁ

『To The World Roadへようこそ』


 ゲーム内時間1/23の8時、風呂と飯を済ませてなんだかんだでリアル20時だ。

 リアルじゃ5日と半日だけど、ゲーム内じゃ3週間ちょいか、流石に運営が想定している以上に私の進行が早いと言わざるを得ない。ガチ勢の本気を舐めたのが運営の運の尽きってところだな。


「さーてと、樽作り始めて、ジャガイモに水撒いて、そしたら硝石丘の材料を集めて……って所か。そういえばいつもの様に計画立てるの忘れてたな」


 ログインしてから予定建てた方が時間の流れも違うからやりやすいのよね。


「まあ、あんまし順繰りやるほどじゃないから……っと」


 メニューからいつも通りやる事リストを開いていつも通りに計画表を立てていく。まあそこまでやる必要のあるものってないんだけどな。言ってしまえば銃弾関係も自前で取りに行かなきゃいけないものはどうしてもあるわけだし。今作ろうとしてるアルコールと硝石以外はどうやっても取りにいかないとだめだ。特に水銀。

 

「何にしても何かしら目標が欲しいわね……とりあえず手持ちのアイテムで雷管もろもろ作っとくかなあ……」


 で、さくっと雷管50個を作成、で、ここからいつも通りに薬莢と雷管用のカップ、鉛玉50個ずつ作り、150g分の火薬を詰めて絞りを入れて落ちない様に固定。さくっと完成する銃弾50発。


「ああ、そうだマガジン作ろうとしたんだった……忘れてたなあ」


 構造的には金属の筒に銃弾を詰めて、上に押し出すために底にバネを入れるわけだ。うん、まあいう限りではすげえ楽なんだけど。G4に合うマガジンって話になるとまた変わってくると思う。銃弾と同じように「マガジン」という括りで、装弾出来る数が違うってだけなら互換性はあると思うけど……その銃ごとの規格のマガジンだった場合はお手上げだな。

 そこまで厳密性はないと思いたい。ドラムマガジン付けたハンドガンとか頭悪いの通り越して気が狂ってるレベルだろうけどさ。そういえばスコープと銃口をたくさんつけれるガンアクションRPGなんてあったな。どっちにしろマガジンの規格が一緒なのであれば元のマガジンより長くても飛び出すのを我慢すれば入れる事はできるはずだ。


「マガジンはマガジンでめんどくさいから後でいいよなあ……まあしばらくはいいや、これ」


 出来上がった銃弾をガンベルトに。これでガンベルトがフル装填。やっぱり全部入ってる時の充実感半端ないな。ちなみにだがステータスにマイナス補正が掛かるわけだが、銃弾10発以上、銃1丁につき1ずつさがる。なので完全に撃ちきったG4を抜いてる状態で、Dボアと銃弾10発以上いれてあるのでマイナスは2だけと言う事になる。

 

「とにかく畑だなあ……うん、なんたら物語みたいな感じ、いやバレーとかファクトリーとかのほうか」


 戦闘もあるし、農業もあるし、後者だな。とりあえず当面の事を考えたしやる事やったし、ジャガイモに水やってこよ。ああ、そうだスプリンクラーとか農業関係の道具とかも開発するの考えてたんだった。ジョウロとかもなんか改良とかできるのかね。


「バケツに水汲んでおいて無くなったら都度その場で補充するっていうのも手か……バケツの量産はすぐだし、意外と使い道多いんじゃね、これ」


 蓋は出来ないけどそのままインベントリに突っ込んでおけば保管できるし、クラフトとかする四角い世界でもマグマだったり水を汲んだまま仕舞えるし一緒よ一緒。

 水問題は良いとしてとにかくジョウロでジャガイモに水を撒いていく。多分こんなに水撒かなくてもいいんだろうけど、この辺はゲームだから細かい事気にしなくてもいいんだろう。


「それにしても苗50個はやりすぎじゃね?」


 ずらっと並んで敷き詰められたジャガイモ畑を見ながら、我ながらやりすぎたと思う。こんだけ水撒いて世話したら農業のSLvも3にあがるわ。そういえばスキル2枠のSLv上限って知らないな、あのゴリマッチョが裁縫Lv10とかだったし、私のキャットスーツが7くらいで作れるってのを考えれば最大20くらいはあるのか。


「いうてもまだ、ゲーム開始して5日ゲーム内時間で3週だし流石にカンストしてる奴はいないか……生産系は上げるの時間食うし」


 生産品の材料が店買いできるものでかつ、経験値と生産品の店売りが高くて、さくさく作れるものを自動生産で大量に作るとかそういう事をしているのもあったが、そういうのも出来ないしなあ。なんならよくある材料選択してしゅいーんと速攻でアイテムが作られるわけでもない。T2Wではレシピで簡易作成ができるとはいえ、一応選んで作るまでの動作は必須になるから大量生産に向いてないのがネックか。


「さーてと……これで畑仕事は終わりっと……樽でも作ってみるか」


 相変わらず煙草に火を付けて一服しつつ、畑から自宅に戻って木工と鍛冶場を併設した庭にやってくる。それにしても庭って言うか工房。既にいっぱいいっぱいで手狭になってきたし拡張も考え……ても無駄だな、そもそも2、3回くらいしか使ってないのにもう拡張って頭悪すぎだろ。


「で、とりあえず調べた感じの物を作るわけだけど……意外と工業製品に近いのよねぇ……」


 まずは蓋の部分を作るわけだが、5枚の板材を半分にカットして半板のものを10枚用意。

 板の両側面に穴をあけて連結出来る様にし、木の棒を刺しこみ5枚重ねた上で圧を掛けてがっちりとはめ込む。で、その連結した5枚の板を円形にカットし、それを2枚作る。

 ここからさらに切った周りの部分を綺麗にするわけだが、とりあえずそれをやるのはいいとして、もう8枚分を作っておく

 その次は側面を作るわけだが、板材を放射状に並べていってから鉄枠の中に立てていくのが良いらしいのだがまずその鉄枠を作らないといけない。

 3歩で隣の鍛冶炉の中に鉄延べ棒を突っ込んでさっき言った通り円形の窪みが出来た鉄の土台を作るのだが、これがまあ大変。

 鍛冶とは言え、武器とか防具のように形が決まってるものではないのでもう私個人の感覚的な所になる。まあ勿論だけどゲーム処理と自動成形で形にはなるのだが、延べ棒数個をダメにした。でもなんだかんだで作れちゃう辺り、私って天才だわ。


「ふーい、ここだけで結構なカロリー使うわ、うん、まあいい出来じゃない?」


 四角い鉄板の中央に円形に溝を掘って板材を刺しこめるようにしてある。問題は立てられるかどうかだけど、よくこんな形に作れるもんだな。自分でもびっくりしてる。

 で、溝に合わせて放射状に置いてある板材の中央に置いて、一つずつ立てていっていって、ばらけない様に固定……するためのものがいる。ネットで探した限りでは金属輪か紐とか縄だから、そのまま鍛冶でそういう物を作ろう……と、思ったんだが針金使って固定しよう。

 

「ちょっとだけ形になってきたな」


 で、ここからひっくり返して蒸気を当てるらしいのだが、とりあえずバケツに水汲んでそれをガンガン熱くして蒸気を出すのがいいかな?っていうか蒸気を当てる意味が分からないんだよなあ……木材に水分を含ませて多少なりと膨張させて隙間を埋めるとかそういう効果か?

 

「まー、やってみるか……ん、しょっと」


 畑に水を撒くために設置してある水道からバケツで水を汲んで、ひっくり返した樽のそばに持ってくる。さて、問題は此処からどうするのかって話になる、一気に高熱の物で蒸気を出した方が良いと言う事なら方法としては。


「がんがんに熱した鉄とか石をバケツにぶち込んで一気に過熱、蒸発させたところに被せる。うん、合理的?」


 一応ネットで見た作り方をなぞりながらやってはいるけど、これもっと簡単に樽作れる方法ある気がする。で、鉄延べ棒とそこら辺に落ちている石を鍛冶炉でがんがんに熱して、真っ赤になった所で水の入ったバケツに投入、すぐさま樽をかぶせて蒸気を当てる。


「やっぱ理由が分からんな」


 しゅうしゅうと熱気が樽から漏れるのを眺めながら次の工程の準備。針金の仮留めじゃなくて本留めに使う金属のフープを作る。

 鍛冶と木工の場所、隣通しにしておいて良かったな、木工製品って結構金属パーツを使う事多いし。

 で、これも鉄延べ棒を使ってフープを作っていく。鍛冶メニューで叩いて伸ばして丸めてわっかにするように何度か試作して、とりあえず5本

 

「で、これを樽にはめて、がっちり固定っと」


 蒸気を当てていた樽を持ち上げ、針金で固定していた部分にはめ込み、金属土台を外してこっちも同じように輪を入れる。そこからさらに中を焼くらしい。この工程をする事でウィスキーの味が変わるとかどうとか。作ろうとしているのは焼酎なので多分味はちぐはぐになるね。

 まあ、いい酒作ろうってのはあの髭親父に手伝わせるから、とりあえず樽さえ作れればレシピ開発、そこから簡易製作でさくさくと作れるはず。

 とにかく焚火を作ってその上に樽をかぶせて内部を焼く。ネットで見る限りでは火柱が立つほどだったし、何か火力の上げる物……木炭とかぶちこんでみるか。

 傍からみたら樽の中に何かを投げ入れ、火柱やら煙を上げさせつつ、ばたばたと走り回っている私の姿があるわけだが、大分滑稽だろな。


「これをもっと大量につくるんだから機械って偉大だわ」


 焚火が燃え尽きるまでしばらく待ち、内部を覗く。真っ黒になった樽の内側だが、これで正解っていうんだから不思議な物だ。そうしてさっき作った板材をかけ合わせて作った丸材を合わせて確認、うん、縁周りを綺麗にするのって大事だな。

 作った樽に合わせて縁の部分を削り綺麗にして、はめ込む。

 さらにここから鉄帯を付けて完成。これも鉄延べ棒をそこそこ消費したが、作れたので良し。で、此処で樽自体の横側中心に穴をあけて、合わせて余った木材で蓋を作って完成。



名称:洋樽(質2)

詳細:醸造や酒造に使われる樽 赤い配管工倒すための物ではない



「あとは、水を入れて漏れがないか確認、か」


 水撒き用の所からバケツで水を汲み、横穴から流しいれて一杯にしていく。

 ……見よう見まねで雑に作ったわりにはしっかりできてるんじゃない?

 ごんごんと樽自体を叩いてみるが問題なし。しっかり水は保持されてるし、結構な量の水を入れる事が出来てる。これ全部アルコールになるって考えたらすごくない?


「やっぱ私天才じゃんっ!」


 蓋の部分を上からばしっと叩く。と、共に「ボン」と樽が爆発と言うか留金が吹っ飛んで辺り一面に水をまき散らす。勿論近くにいた私はそれをもろ被りだし、庭は水浸しだし、樽は作り直しだ。


「訂正、努力型だわ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る