<6:策士を溺れさすは恋愛の技量>

勢いで告白した俺だったが決心もあった。彼女が「この恋が初恋である事」を聞いてから引きずっている決心。だから、その下ごしらえとして高校入学後、互いに落ち着いてきた頃、さくらと会う事にした。


実際、この日が初めて彼女と休日に会う日だった。つまり、初デート。仕方がない、中学時代は受験で塾に通い詰めていた。彼女もそれを理解してくれていた。


ショッピングモールで軽くデートをした。しかし、彼女は俺の声、俺の顔を見るなり、恥ずかしがるのは治っていないのでロクに会話もせずにウィンドショッピングをした。


ある時彼女がデート中、頻りに小指の包帯をいじっていたのが気になった。聞くと、体育の授業で突き指をしたという。あまり触り過ぎると悪化すると思った俺は強引に突き指していない方の手を握った。


彼女はわたわたしている。そこで俺は紳士を演じて一言。


「これでいじれないだろ。女の子に怪我は似合わない」


彼女と恋人つなぎをしたのはこの時が初めてだった。


駅前のカフェに彼女と行き、自分と彼女の飲み物と彼女が所望したアップルパイを注文し、会計を済ませる。俺の流儀で初デートは何が何でもおごる。後輩なのだからさらにだ。テーブルに運び、彼女と向かい合って座る。


俺は真剣な顔をして話を切り出した。


「さくら、このまま付き合い続けるのは難しいと思う」


「なんでですか? もしかして高校で好きな人でもできたんですか? 」


急な発言に彼女は慌てふためく。


「そうじゃない。今、俺は高一。さくらは中二。違う学校になると二人の時間が作りにくくなると思う。俺は彼女であるさくらを大切に出来ないのが悔しい。それならいっそ別れた方が」


「嫌です」


はっきりとした言葉だった。でもこれが一時の感情なら二人の恋愛に未来はない。だから俺はもう一度言った。


「しっかり考えてほしい。二人の為に」


すると、彼女はしばらく黙った。素直さも彼女の魅力だと俺は思った。一呼吸おいた彼女は言った。


「私は先輩から気持ちが離れる事はありません。会えなくても、メールは出来るから寂しくないです。だから、別れるなんて嫌です」


確かに、その通りだった。彼女の強い意思が感じられ、俺は嬉しかった。


その後、彼女とデートしたり、彼女が高校の学園祭に来てくれたり、メールしたりと恋人同士の甘い時間を過ごした。ここまでは俺の作戦通りだ。

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