<3:可愛い後輩と大人を演じる先輩>


校門を出て、しばらく経ち、周りの生徒の数が減ってきた頃、俺は辛抱できずに言ってしまった。


「いやー驚いた。手紙を渡されての告白なんて、今まで経験した事が無かったから。上原さん、俺の顔も見ずに去っちゃうんだもん」


上原さんは俺の顔とは逆の方向を向きながら


「じ、実は、わ、私、恥ずかしがり屋で。渡すのが精一杯で、逃げちゃったんです」


と言った。彼女にとって接点の無い先輩に告白するという行為はとてもハードルの高かったのだろう。そして、彼女は一呼吸おいて、俺の方を見ると


「わ、私じゃ駄目ですか? 」


と上目遣いで言ってきた。俺は強力な弾丸に胸を撃ち抜かれた気がした。なぜなら、小柄で髪もきれいにセットされていて、おどおどしているおしとやかなTHE後輩彼女というだけでも十分なのに上目遣いの魔力が加わったら、大抵の先輩はいちころだ。


俺は鼻の下を伸ばさないように気を付けた。心の中で「俺は先輩、大人な男」と連呼する。そうしながら、笑顔で


「そんな事ないよ! 」


と言った。内心、「上原さんは可愛いし付き合いたい! 」と言葉を足したかったが、踏み留まった。この甘い罠にたぶらかされ、後々後悔する訳にはいかなかった。


俺は受験生。


ここで選択を誤れば、未来が危うくなる。ぐいぐい行き過ぎる事なく、彼女の情報を獲得していくのだ。

一日目は世間話をして終わった。別れ際に「告白の答えは待ってくれ」と言い、その日は別れた。

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