<2:積極性な先輩と策士の後輩>
次の日の放課後になり、俺は時間ぴったりに校門前で待った。校門前に立つ先生に不審がられながら、同級生に「誰を待ってるんだ? もしかして彼女とか? 」というちゃちゃをいさめながら待った。
言われてみれば、共に下校するなんて友達か恋人同士しかありえない。相手が女子なら必然的に後者に思われても仕方がないと今更ながらに頭を抱えた。恋は人を盲目とさせるという言葉は間違いではない。
しばらく時間が経った。しかし一向に彼女が来る気配が無い。俺はとうとう痺れを切らして、探す事にした。
「これでは俺が積極的に下校したいみたいじゃないか。しかし、約束してしまった手前、キャンセルも出来ない」
今日は全校が一斉に下校する日であった為、校門から学校方面に向かう俺は下校する生徒と逆行する形でもみくちゃにされた。まさに逆行、下校の約束においても気持ちの逆行が起こっていた。探す事なんて出来るのかと思っていたら、群衆にもまれた末に脇道に押し出されてしまった。
「全く、これじゃあ探すに探せない」
俺は下を向き、膝に手を置きながら、群衆にもまれ消費された体力を回復させた。そして、上を向いた。するとそこには手紙を渡してきた子と取り巻きが木の下にいた。待っていたぞと言わんばかりに。
もしかして、俺が本当に校門前に来るのかを傍から見ていたというのか。一本取られたと思ったが見つけられてようやく帰れる。上原さんの方を向いて俺は言った。
「ようやく、見つけたよ。上原さん。じゃあ一緒に帰ろうか」
だが、彼女は下を向いたまま足を動かそうとしない。見ると耳が真っ赤になっている。友達の一人が恥ずかしがっている彼女を前に押しながら
「行ってきなよ、さくらちゃん」
と言った。押し出された彼女は俺との距離が近づいた事で今にも耳から蒸気が出る程に顔を赤くした。
その時、俺は冷静を保っていたはずだが、心の中では火事が起こっていた。何という可愛い子だろうか。
派手さのない清楚さ、加えて純粋な感情の起伏。全く、なんだこの可愛い生き物はと思った。
その気持ちを押し殺し、俺と彼女は一緒に帰る事になった。
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