第3話 弱肉恐縮

「……」

こんにちは、カバです。

そう、あのカバです。ボーッとしてる

今日もアフリカで歯に鳥を止まらせてのほほんとしてます。

「いい天気だな」

え?

そんな生き物じゃないだろって?

時速40キロ?凶暴?

...ごめんわからないや。

なぜなら僕は


「カバだから。」

静かに、ボケーッとしてるから

「言っちゃダメなんだよ、最強とかそういうの。」

アフリカじゃ特に、肩書き多いから。

「ライオンとか大変だよ?」

百獣の王とか言われてさ、何よりも強いみたいな。

そんな風に言われはじめたもんだからさ、そう生きなきゃいけなくなってさ


「元は立髪生えたデカいネコだったのに周りが言うから百獣の王やらないといけなくなっちゃてんの。」

特に強い奴って厄介なのはさ、おひれが凄い付いて、根も葉も無い噂が立ちまくんの。

「この前も大変そうだったよライオンさん、大勢のハイエナに囲まれてさ」


『カシャカシャカシャカシャ..』

「すみませんライオンさん!

週刊サバンナですけど、お時間宜しいでしょうか?」

「ちょっフラッシュやめて下さい、他の動物の迷惑になるんで。」

「申し訳ございません

さっそく質問なんですけど...」

「聞いてないし。」

ハイエナは厄介だよね、いやらしく隙を埋めてくるからさ。

「産まれたばかりの胎児を谷底に突き落として、這い上がってきた子だけを育てるって本当ですかね?」

「ありえませんなんですかそれ?

僕何処かで言いましたか」

 「いや、そう聞いたので..」

「普通しませんよねそんな事?

する訳無いでしょちゃんと育ててますよ。..谷底って酷いな。」

「それとですね、シマウマとの不倫デートを撮った写真があるんですが」


「...え?」

「心当たりありますよね、ほらここにバッチリ...」

「いや、あのこれは捕食中というか」

「大胆ですね〜捕食中ですか?」

「いやその..」

これは本当だったみたい。

大きく見出しになってたよ

『百獣の王ライオン

夜のサバンナで縄張り捕食デート』

僕も前にキリンと付き合ってたけど高飛車でやんなっちゃったよ〜、スタイルはめちゃくちゃ良かったけどね。

「いちいち高い所の草しか食べないしワガママなんだよな。」

特性といったらそれまでだけど、都合の良い言葉だよななんか。

「知らない振りはしとくけど」

正直、本気を出せば平気で殺せる。

ライオンもヒョウもハイエナも勿論キリンだって赤子同然だけど、それをやると最強認定されて生きづらくなるから思いきり無力のフリをしている。

「領域(テリトリー)に入ったら

殺しちゃうけどね♪」

まぁ実際近く通るとマウント取ってくるからライオンはざまぁみろだけどね

「反省して立髪剃ってたっけ。」

ホントにデカいネコになってたな。


「すみませんAFKですけど」

「はい?」

「集餌です。」

「ああ..また来たんですか」

アフリカ放送の連中が性懲りも無く餌をぶん取りに来やがった。

「ウチ見てないですけど?」

「でもありますよね、家の中に。」

毎回思うけどどういう理屈なのコレ?

「そういう事なんで..いいすか。」

止むを得ないかな

「あれ..ちょっと何アレ?」


「え?」

「ガブルシャアッ!!」「うわっ!」

不味い、まぁでも仕方ない。

「歯ぁ磨かなきゃ...」

言ったじゃん、テリトリー入るなって

「奥歯メンドイんだよな。」

肉片詰まってるよもう、気になるわー

「前歯鳥が止まるからな〜、あんまりやると大変なんだけど..」

これがあるから面倒で野菜ばっか食べてるんだけど、やっぱり肉って美味いよね。


『ピンポーン』「え、なに?」

またなんか来た、そんな来るかね。

「すみませーん週刊サバンナですけど

少しお話し宜しいでしょうかー?」

「週サバ?

なんでウチにくんのさ。」

「ちょっとお伺いしたい事がございまして、よろしいでしょうか?」

うわハイエナだ、ライオンのとこにしつこく張り付いてたヤバいヤツ。

「なんでしょか..?」

「実はですね〜

おかしな噂を聞きまして。」

「噂?

そんなんありましたっけ」

白々しいなコイツ、解ってるクセに。

売れないアイドルかよ、そこそこのルックスを誤魔化す感じの。

「それがですね、この付近をウロつく人達が良く姿を消すらしいんですよね

丁度この家の辺りで。」

「へぇ..」

領域に入ったヤツを何人か喰った事か

物騒な言い方するなよ、文面だけ聞いたら刑事事件のそれじゃんかよ。

「怖いっスねぇなんか。

そんな事起きてたんすか」

やっぱ適当に遇らおうとすると白々しくなるな。売れないアイドルみたいだ

「何か知りませんかね?」

「...さぁ、何も。」

完全に刑事の聞き方じゃんもう、しんどいよなんか。

「..あ、あっちの人に聞いてみたらどうすかね」

「え?」

「ガブルシャアッ!!」「うおっ!」

大丈夫かなハイエナの肉って。

細菌とかエグそうだけど、もう遅いか


「.....結局こうなる訳か。」

また歯磨かなきゃじゃん、めんど。

「カメラ..周到だな〜アイツ、適当に遠くブン投げとくか。」

振りかぶって...後ろ足でドーン!

「よし」

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