第2話 囚われのホームステイ
「..え?」
夜中だというのに空が明るい。晴れているとか、そういう事で無く、ライトのようなものが、大々的に照らしている感じだ。
「車か?
ツってもこんなに光るかな..」
牧場の牛が連れ去られるなんて話も聞いた事あるが、住宅街に牧場がある筈も無し。
「迷惑かけやがって、何なんだよ!」
思いきりカーテンを開くと、光は空から降っていた。
「...マジでなんだ?」
よく目を凝らし覗いてみると浮遊する物体が見える。物体は徐々に下がっていき、やがてはっきりと見える範囲を飛行するようになる。
「嘘だろ、あれUFOじゃん!」
空を浮遊中の物体が真上に止まり、器用に建物を透かし人物のみに光を当てる。
「....え?」
身体は屋根より高く、見下げる位置にある。
「あれオレ..拉致られてね?」
円盤の中に吸い込まれ、意識を失った
UFO内
「あ、ヤベ!
今日キャトルシュミレーションの実習だった。」
「嘘、お前今日キャトシュミなの?」
「牛とって来いって言われたわそういえば、忘れちったよ。」
「そういえばベーダのやつまたUFO免許落ちたらしいよ」
「マジで?
前も地球に墜落してたじゃん!」
機内で世間話にふける他所の人の傍には、横になる内の人が目を瞑っていた
「うーん..」
「あ、やべっ!」
「言葉工夫しなきゃヤベェな」
「どこここ?
...え、宇宙人!?」
「ピロロロロ、ピロロ」
「宇宙人だ、宇宙人だよね!」
「ウィルルルル...」
「宇宙人だ、宇宙人じゃん!ねぇ!」
『ちょっとマズくねぇか?』
『なんかワクワクされてんな。』
予想外の反応に狼狽する他所の方々、物凄く怖がると思ってた。
「まぁいいや記憶抜いちゃおうぜ」
「だな、どうせタダじゃ返せないし」
家の上を通り過ぎようとしたとき、光を弱めようとして強めてしまった事で誤って拉致してしまった。
「さっさとやっちまおう」
「ああ、指向けてっと..ちょっと光強いな。どうしよ」
指の光を肌に当て一定の時間留める事で記憶を吸うのだが何故か余りにも光が強すぎる。
「あ、これで抑えよ。
...よし、小さくなった。いくよ?」
「え今喋った?
喋ったよね、今喋ったよね!?」
「そんなんで大丈夫か?
指巻いただけじゃないのかそれ」
間に合わせのストッパーで抑えたが、上手いこと記憶は取れるのか。
「それ何、ちくわぶ?
なんで指にちくわぶ巻いてんの!?」
この季節は冷えると聞いたので、スペースネットで検索して一番上に出てきた温かい料理の材料を買い占めた。
ちなみに検索ワードは
「地球 冬 料理」だ。
「ポロロロ..」
「今更遅くね?」「..そうだな。」
額に指置き接続を開始する。
「あちょまっ..!」
「動くなって、ズレると痕跡残るから
面倒だからさ」
「俺抑えてるよ」「悪りぃ。」
止むを得ずの処置、見ず知らずの人間に危害を加える程横暴じゃない。
「……よっ、終わった。
もういいよ離して」
「変になってねぇだろうな」
「俺たちと出会った記憶だけ曖昧にしといた、後は部屋に戻そう。」
死んだように気を失っているのは記憶を弄った副作用。眠っているからこそ何でもないが、素面のままなら殴打級の衝撃と痛みが伴う。
「やっぱ合わねぇなぁ地球、空気がありすぎて持て余すよな。」
宇宙人と何となく、我が星の無駄には気付いているようだ。
「特に日本って国は漫画とアニメしか需要が無いらしいからな」
「マンガってこれか?」
「そう、そのペラペラのやつ。」
「この為に生きてんのか」「みたい」
「変わってんな。」
己の事を棚に上げて人類を変わり者扱いとは、別文化は恐れ入る。
「それより早く寝床に戻してさ、この星出ようよ」
活き辛い場所から出て考え直すらしい
「そうだな、なら金星でもいくか」
「金星美人多いからな」「美人多い」
指を折る程有数の美人星らしい。
「その前に牛一頭いい?」
「お前真面目かよ。」
「いるらしいんだよね、この星のなんかホッカイドーってとこにさ」
指を折る有数の寒い地域らしい。
「間に合うのかよキャトルシュミ」
「大丈夫、結果送るだけらしいから」
「ならやってるフリすれば?」
「いや、そういう事じゃないから。」
「やっぱお前真面目じゃん!」
不正とかやんわり出来ないタイプの気難しい宇宙人は今朝も一度だけ使ったグラスを洗ってから家を出た。
「使ったら居た場所に戻すし」
「うわ真面目。」
「ミステリーサークルとか跡残さずに
既存の地面のまま」
「徹底して真面目、気持ち悪っ!」
記憶は違和感の無い程度に返却してリセットする。
「そういえばUFOの中すごい片付いてるな、性格出てたわ」
「これは姉ちゃんがやった。」
「あ、そうなの?」
出掛けるというから貸したら女子の感じで返ってきたらしい。
「金星牛の後でいいよね?」
「いいよ別に。」「ベーダも誘う?」
「アイツ来ないよ。
だってイン星派だもん」
「確かに全然星から出ないもんな。」
青年を降ろし北海道へ
後日起きた青年は、頭に多少の違和感を残し〝変な夢を見た〟と呟いたという。
「ちくわぶ忘れてた。」
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