第62話 魔王信長

「信長……こうして対面すると、今までのジャスコ武将とは大きく違う威圧感を持ち合わせている。吾輩も武者震いが止まらないな」

「……この男が……全ての元凶……」


 ベアタンクとフィールが身構え、信長を注視する。人知を超えた力の持ち主相手に、ジャスコ武将を撃破した戦士でさえ身が竦みそうになってしまう。

 そして――十児は――


「どこまでも、馬鹿にしてッ!」


 信長の第一声を耳にし激昂した。先祖から聞かされていた信長の印象とは大きく外れた風格が許せなかった。だからこそ、ここで斬り伏せてみせる。ママゴトで世界を混沌に導こうとする魔王を滅ぼしてみせる。


「馬鹿になどしていない。これが儂だ、明智の子よ」


 くっくと沸いた鍋のように微笑み、信長は告げる。


「ジャスコとはあらゆる商業を手中に収めた存在。まさに天下統一のあるべき姿。そして、日本中に、世界に進出しようという意思がある。ジャスコもまた、熾烈な競争に勝とうとしているのだ。かつての儂のようにな。だから、儂もジャスコと同調することができた。姫と共に、魔力にジャスコという概念を書き込み、ジャスコ術を編み出した。儂こそがジャスコ。ジャスコこそ儂。この世を統べる店魔王なのだ」


 頭が痛くなるような言葉の数々だ。念仏を聞かされた悪霊の気分を十児は味わった。


「ジャスコジャスコジャスコ……馬鹿の一つ覚えだ」


 血管が破裂しそうなほど、十児は愛刀の柄を握り締める。


「この商業施設は人々の暮らしを支え、豊かにさせるものだ。決して、お前の玩具などではない!」


 十児は【近景】と【貞宗】を構え、名乗りをあげた。


「俺は明智十児。明智光秀こと明智十兵衛の直系の子孫。お前を滅ぼす男だ。いざ尋常に……勝負ッ!」


 獣のように雄々しく叫ぶ十児。

 最終決戦の火蓋はこの瞬間切られたのだった。


 怒りの炎を真っ赤に燃やし、十児は天主の床を蹴る。【近景】と【貞宗】を奮い立たせ、淀みのない受け継げられし剣閃を放つ。だが、霊力を込め威力が増加したはずの剣技であったが、それらは信長の人差し指一本で軽くいなされてしまった。


〝――親父たちの話と違う……。今の信長は、それほどまでに魔力で強化されているのか?〟


 先祖たちは聖刀を振れば信長に傷を付けることができたと聞いたが、ここまで信長の力が増強されているとは想定していなかった。そうさせたのも、ジャスコの力なのだろう。十児は奥歯を強く噛みしめる。


「十の名を継ぎし者……今度は貴様か、明智十児。儂も貴様に会いたかったぞ」


 破邪顕正の刀をものともせず、世間話をするかのように信長は話し始めた。


「儂も何度も明智家の世話になった。復活する度に刀の錆に変えられ、それの繰り返し。飽き飽きしたぞ。儂に拘らなければ、もっと人生を謳歌できたというものを」

「お前も森長可と同じようなことを言うか。お前が生きていれば、世界は混沌に包まれるんだ。それを許さないために明智家が……聖人から力を得た俺たちがいるんだッ!」

「まあよい。貴様も儂を討つことのみに生涯を捧げ、疲れただろう。明智家を滅ぼし、楽にしてやる」


 刹那。信長が拳を握り締め、十児の鳩尾に砲弾の如く殴打を繰り出した。


「がっ……」


 血反吐が噴き出す威力だった。体の中の臓器がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられているような不快感を味わいながら、十児の体は部屋の壁に激突。壁はベニヤ板であるかのように軽くぶち破られ、そのまま落下を始めてしまった。


「明智殿!」「十児!」


 フィールとベアタンクの叫ぶ声が聞こえたが、鼓膜に飛び込むよりも早く十児の体は落下を迎えた。


〝――くっ……魂が体から抜け出しそうな威力。ジャスコ術すら使わず、素の戦闘能力がこれだと……〟


 白目を剥きながら、天主から落下する十児。屋上に激突する寸前で受け身を取り着地を決めたものの、体が大きく軋み痛み出す。


「ぐっ……くそっ……持ってくれよ、俺の体……」


 ジャスコ武将との激戦に激戦を重ね、体は限界をとっくに超えていた。その上で魔王の相手をしなければならないのだ。骨が折れるとは言うが、実際に骨は何本か砕けていることだろう。それでも、挫けてはならない。明智家の男として生まれた時から、この苦痛は宿命付けられていたのだから――




「くっくっく。儂がこの世紀末に蘇って初めて拳を振ったのだが……なんと脆きことよ。慢心し、研鑽する心を忘れていたのではないか? 儂を失望させるなよ、明智十児……」


 信長がゆったりと壁の穴から天主の縁へと歩み行く。


「待て、信長! 僕たちがいることも忘れるな!」

「まさに強き者。吾輩が求めていた力の持ち主。信長よ、最強の座を賭け、吾輩と戦ってもらうぞ」


 聖剣【オズサーベル】を中段に構えたフィールと、闘気を漲らせるレスラーベアタンクが信長を挑発する。


「いいだろう。貴様たちも我がジャスコ武将を斃した者たち。儂に挑む権利はあるだろう」


 ぎろりと両者を睨む信長。フィールは勇気を振り絞り、信長に挑む。その鎧姿も相まって、幻想世界の魔王に挑む勇者のような姿のようだ。


「〈火竜の爪〉!」


 聖剣にエーテルを注ぎ、必殺の技を披露するフィール。火線が迸り、信長を焼き尽くそうとするが、


「炎には慣れておる」


 攻撃をものともせず、信長はフィールに接近。鎧姿の騎士を一気に背負い投げし、天主からジャスコの屋上へと突き落とす!


「ぐっ……僕の剣技も通用しないのか……!」


 十児と同じように屋上で着地を決める聖騎士。忌々しく縁に立っている信長を見上げた。


「ならば次は吾輩だ、信長」


 続いて闘気を漲らせ、ベアタンクが魔王に迫る。


「〈ベアナックル〉! 〈ベアナックルⅡ〉! 〈ベアナックルⅢ〉!」


 ベアタンクは筋肉を膨らませ、ジャブジャブストレートの拳を信長へと向けるが、


「遅い。まるで羽虫のような鈍さよ」


 その全てが信長の手のひら一枚によってガードされてしまった。

 信長はぬるま湯に使っているような表情を浮かべ、


「獣の如き闘士よ。本当の力というものを教えてやろう」


 とんっと音が出そうなほど軽く、人差し指でベアタンクの剥き出しの胸を突く。

 直後だった。筋肉の塊であるベアタンクの体が猛烈な勢いで吹き飛ぶ!


「なんと……!」


 マスクの中で瞳が収縮する。ベアタンクもまた天主から放り出され、ジャスコの屋上へと落とされてしまった。




「他愛もない。儂の寵愛を受けたジャスコ武将を斃した猛者がこの程度とはな」


 信長も十児たちを追うように屋上にずんっと轟音を鳴らして着地。禍々しい殺気を噴出しながら、戦士たちを凄む。王たる器を備えた覇者の姿に、十児たちの身が痺れそうになってしまう。


「だが、貴様たちの森羅は儂の糧になり得る。これこそが儂が望んだ結果だ」

「どういう意味だ、信長……」


 懸命に【近景】と【貞宗】を構え直しながら、十児は尋ねる。


「数々のジャスコ武将を城内に配置し、貴様たちの相手をさせた。そして、貴様たちは打ち勝った。その結果、貴様たちは感じたはずだ。このまま儂を――魔王信長をも斃せると。希望を胸に抱いたはずだ。それこそが、人の可能性――森羅を増幅させる舞台装置だったのだ」

「何を……言っている……?」

「そして、この地で儂が貴様らを殺戮すれば、希望は絶望に変わる。その森羅は全て魔力に変換される。とどのつまり、貴様らはここで儂に殺されるために、今まで生きていたのだ」

「……吾輩たちがジャスコ武将を斃し続けていたにも関わらず、最後まで現れなかったのは……希望を育ませるためだと……」

「そう、これこそが『すばらしい新店舗計画』。儂は最初から、ジャスコ武将を斃し生き抜いた貴様らを殺すために、待っていたのだ」


 今まで戦っていたジャスコ武将は全て、希望を絶望に変え、魔力を得るための捨て駒だったとも言い換えられる事実だった。そして、さらに絶望的な言葉を信長は続けた。


「貴様らを殺し、魔力を増強させれば、散って行ったジャスコ武将を蘇らせることも容易いだろう」

「何だと……」


 今までの戦いが全て無駄になる。悪夢は蘇り、ジャスコ武将はこのジャスコ城という繭から羽化し、世界中に解き放たれる。その先に待つのは乱世にして地獄、まさしく魔界。


「そしてその末に、儂はジャスコと共に魔界へ進出する。では、踊ろうではないか。死の舞踊を。かつて、貴様の先祖十兵衛から受けた苦しみを、無限にして返してやろう」


 禍々しい三百眼がぎらりと輝き、


「儂の魔の力に、恐怖するがいい……明智十児!」


 信長は魔の瘴気を身に纏い、魔力を発揮した。


〝――屈してなるものか。必ず、信長は俺が斃す!〟


 満身創痍の体に活を入れ、十児は魔王に立ち向かう。その果敢な姿は聖戦士の鏡映し。【近景】と【貞宗】に霊力を宿し、魔王の首を狙う!

 対峙した信長は口が裂けるほど笑んでみせた。


「儂が目指すのは、武と商、そして魔の融合。見るがいい、これが儂のジャスコ術――」


 信長の右手に紫炎が迸り、魔力が漲り、奇跡を呼び起こす。一瞬後、信長の手には太刀が握られていた。刃渡りが七十センチメートルはあろうかという太刀。だが、その刀身には奇妙極まりない装飾が施されていた。


「〈プレミアム商品剣〉なり!」


 信長がそう宣言した通り、太刀の刀身は商品券が何枚も繋ぎ合わされて形成されていた。もちろん、それらはジャスコ店内で使用可能な商品券である。


「この期に及んで、ふざけているのかッ!」

「儂の力が伊達でも酔狂でもないことを証明してやろう」


 信長がびゅっと〈プレミアム商品剣〉を豪速で振り下ろした。まだ十児とは数メートルも離れているにも関わらず、迷いのない初太刀であった。


「何を……?」


 十児が目を見開いた瞬間――頬が、肩が、膝がびっと裂け始める。


「ぐっ……?」


 一瞬遅れて十児は理解する。信長の〈プレミアム商品剣〉に斬られていることに。


「明智殿! その剣は……刀身が鞭のようになっている!」


 聖剣を構えているフィールが叫ぶ。彼もまた信長と彼我の距離を保っているにも関わらず、【オズサーベル】から剣戟の音を鳴り響かせていた。


「まさか……商品券が鎖のように繋がっているのか!」


 理解した時には既に信長のペースだった。蛇のように自由自在に宙を舞う商品券の斬撃が十児を、フィールを襲撃し始めたのだ。間合いなど無意味。これでは信長に近付くことも叶わない。


「くそっ……【金橘】の出番か」


 ジャケットから【金橘】を取り出し金気を込める。やがて銃身が光り輝き、トリガーを引くと、超威力の弾が撃ち出された。〈金軌貫猟〉――必殺の霊弾が彗星のように尾を引き、信長に着弾する。


 が――


 寸前で、刀身を形成していた一枚の商品券が弾を防いでしまった。

 舌打ちする十児と入れ替わるように、


「吾輩が代わろう、十児よ」


〈プレミアム商品剣〉を攻略すべく、ベアタンクが闘気を纏い歩み出る。両腕を前に伸ばした姿は戦車の砲身を模したよう。砲弾が充填され、その手のひらから轟音と旋風と共に発射!


「〈ベアバスター〉!」


 闘気の砲弾が空を貫き、〈プレミアム商品剣〉を形成している商品券の束を吹き飛ばした。


「ほう……」と信長が驚嘆。


 ともかく、ベアタンクの力によって隙が生まれ、活路は開かれた。


「剣技で畳み掛ける!」

「僕も続こう!」


 十児とフィールが揃って聖刀と聖剣を煌めかせる。


「〈明智流滅却術・氷狼攻め〉!」

「〈六枚翼竜の竜巻〉!」


 氷の狼の牙が信長の左腕を噛み砕き、風の刃が右腕を切り刻む。全身全霊、渾身の一撃。続けて十児は姿勢を低くし、驟雨の刺突を繰り出した。〈明智流滅却術・五月雨〉――聖刀の斬撃を受け、信長の着用していたジャスコの制服が破かれ、切り裂かれる。その末に、魔王は初めて蹈鞴を踏んだ。


〝――よし、このまま首を……〟


 形勢逆転。逆襲開始。そんな四字熟語が頭に浮かび、十児は二振りの聖刀を十字に構え、霊力を漲らせる。


「〈明智流滅却術・陰陽十字斬〉……!」


 信長の首目掛けて繰り出されるその軌跡が宙に描かれた瞬間――


「調子に乗るな」


 信長の体から炎が迸った。その激しい熱風により、十児とフィールの体が吹き飛ばされてしまう。


「ぐっ……またジャスコ術か……」

「我が魔炎にて灰と化すがいい……〈火災訓練〉!」


 刹那。信長の周囲から火柱が迸る。火山が噴火したような勢いで弾ける炎の乱舞に、十児もフィールも、そして距離を保っていたはずのベアタンクも蹂躙されてしまう。


「ぐっ……これは、伝承にあった魔王の技か……」


 火柱に翻弄されながら、十児は思い出す。かつて、〈本能寺の変〉でも魔王信長は火柱を発生させ、光秀と戦ったという。その伝説の技が再現されているのだ。それも、威力が跳ね上がったジャスコ術に昇華された形で――


「姫も〈防災訓練〉というジャスコ術を扱うが、あれは煙を出すだけのもの。天邪鬼らしいあれと違い、〈火災訓練〉は火を用いるジャスコ術。ジャスコの火災訓練は本格的であり、実際に火を扱い、消火器の扱いなどを指導するらしいからな」


 火災に備えるための火災訓練を、魔王信長はあろうことか攻撃術として利用した。まさに、戦国武将ならではの発想だ。

 広範囲に広がる炎の渦から逃れながら、十児たちは反撃の機会を伺うが――

 絶望は加速した。


「続けて喰らえ……。次に儂が扱うは、『ジャスコスポーツ』の取り扱い商品……」


 炎の中で信長が新たなジャスコ術を使用。〈プレミアム商品剣〉の代わりに手に握られたのは、


「金属バットなり」


 野球の道具バットだった。信長にバットという異質な組み合わせ。だが、これこそが新たな恐怖の幕開け。


「受けるがいい、魔球の嵐。〈ノック三千弾打ち〉……」


 ぼっと音が弾け、信長の手には闇のような色をした禍々しい殺気が凝縮された球が出現。それを信長はバットを使い――ノックを始めた。ノックで球が打たれると同時に信長は新たな魔球を生み出し、続けてノックを放つ。それが繰り返し続けられる様は、まさに野球選手の練習風景のようだ。


「ぐっ……くそっ……逃げ場がない……っ!」


 ノックにより吹き荒れる魔球が十児たちを襲撃。かつて信長が合戦場で編み出したと実しやかに囁かれている、火縄銃による「三段撃ち」はこの現代において「三千弾打ち」へと進化を果たしたのだ。

 火縄銃よりも遥かに威力が増加している魔球が十児たちの体を蹂躙し始める。十児は懸命に【近景】と【貞宗】の刀身で防御を始めるが、何球かが掻い潜られ、腹部に直撃。血を吐き出し悶えた。


「耐え切れない……」


 聖騎士の体を覆っていた鎧にも容赦なく魔球が当たり、ひび割れ、砕け始める。


「くっ……我が闘気、力及ばずか……」


 ベアタンクの鍛え上げられた肉体にも衝撃は与えられ、その肌が大きく腫れ上がり、さらには火傷のような痛みまで植え付けられる。

 炎上を始めた屋上は、地獄絵図としか表現しようのない光景となっていた。

 四百年前の〈本能寺の変〉の再現である。ただし、優勢なのは明智ではなく信長だ。


「ご……はっ……」


 体の損傷が激しすぎる。血も流し過ぎた。折れた骨の数も、両手両足では数え切れない。十児の体にはもう限界に達しようとしていた。


〝――これが……魔王の力……死ぬわけにはいかないというのに……〟


 意識の糸が今にもぷつりと切れそうな十児の体に向け、信長は魔手を伸ばす。


「ぐっ……」


 首を絞められ、血泡を吹く十児。信長は醜悪な笑みを浮かべ、


「仕上げだ」


 さらにジャスコ術を使用した。

 すると、十児の傷だらけだった体から――新緑の息吹を感じさせる芽が伸び始める。


「なんだ……これは……」

「ジャスコ術〈ジャスコの植樹祭〉……」


 植樹祭――それはジャスコが一九九一年から始めた取り組み。命溢れる森を未来に繋ぐための環境活動である。ジャスコの店舗や周辺の山々に苗木を植える植樹活動であるが、魔王信長ともなればそれは人の体を木に変えるジャスコ術となるのだ。

 信長の魔力の籠った蔦に絡め取られ、十児の体は一本の雄々しき木へと変化を始めていく。十児は声を出すこともできず、ただ木の中へと飲み込まれてしまう。


「この木が、貴様の霊力を吸い尽くし、儂の糧へと変えていくだろう」


 明智十児は沈黙する。破邪顕正の十字の斬撃を繰り出すこともできず、二振りの聖刀も十字架も木の中に吸い込まれ――

 死んだも同然となってしまったのだった。




「くっ……明智殿……ッ!」


 十児が目の前で木に変えられるという絶望的状況。少しでも抗うべく、エーテルの剣技を交えてフィールが躍り出た。ベアタンクも火柱を潜り抜け、信長に拳をぶつけようと試みる。


「魔王信長……これだけの膨大な魔力……どうやって手に入れたんだ……魔界とどんな契約を交わしたんだ……」


 様々な型を繰り出しながら、魔界の謎を探るフィールは尋ねた。


「くっく……」


 手にしていたバットで【オズサーベル】を捌きながら、信長は答える。


「儂がどのように魔力を手に入れたか、気になるようだな、異国の騎士よ。ならば、冥土の土産に答えてやろう」


 ベアタンクの殴打も手のひらで防ぎ、弾きながら信長は言の葉を継いでいく。


「我が魔力は、魔界に赴き手に入れたものではない。向こうからやって来たのだ。まさに、異国の船のようにな……」

「魔界から……来ただと……?」

「儂は魔を愛でた。儂が愛でた魔は、人の姿をしていた……」

「何を言っているのだ……?」


 不可解な言葉に戸惑いながらも、フィールとベアタンクは攻撃を続ける。信長はそれら全てを防ぎながら、決定的な言葉を告げるのだった。


「わからぬか。貴様たちも出会っただろう。あれの魔力を儂もまだ感じるぞ? 他の退魔師と戦闘中のあれのことだ」

「あれ……? まさか……ッ!」


 魔王と激戦を繰り広げ、恐慌状態に陥ったも同然だが、フィールの背筋はさらに極寒となってしまった。

 信長が愛した魔。人の姿をした魔。その正体こそ、


「そう、貴様らが濃姫と呼び、今はジャスコ姫と名乗る女。あれこそは。儂に魔力を与えた存在なのだッ!」

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