おちてゆくせかい

ろうそくの香りではない。


嗅いだことのない、濃厚な香りだ。

あの小人を探すがどこにもいない。

あいつが何かをしたに違いない。


ぐるりと部屋を見渡すと、僕はふらついてしゃがみ込んでしまった。


部屋全体が熱を持って、気怠い空気に包まれているような。

そんな感覚がして、僕の頭もいつの間にか回らなくなっていた。


だけど。


身体が重いのに心地よい。

と。


吸血鬼の小人の声が頭に響いた。


「ただの人間はこれで終わり。どうなるかはお前次第だよ」


もう目を開けていられない。

頭を抱え込む。


目の前が真っ暗になり、体の力が一気に抜けていく。


ここはおばあちゃんと暮らしていたあの山小屋で、

床に倒れ込むはずなのに、

力の抜けた僕の体は、どこまでもどこまでも落ちて行った。


次第に気が遠くなる。

ここは、どこだ…


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