まほうの、しごと

声に出さなくても分かるのか。


「そう。オレたちは相手の心の中を読めるの。

 魔法使いになる第1の条件だからよく覚えておいて」


はぁ。

僕は首を縦に振りながらそう言った。

身動きをしてろうそくの火がゆらゆらと揺れる。

時間が止まったようにゆっくりと影が動いた。


話を聞くとこの小さな人間は、

「第3の世界」という魔法使いの世界から来たらしい。


それも何かの偉い人で、吸血鬼の血を引いているのだとか。


「それで?」


僕は作業台に寄りかかり、忙しなく飛び回る小人を目で追いながら言った。


「この家の血を引く者ならこちら側の世界の仕事を手伝う事になっているんだよ。

 つまらないだろ?人間との生活は」


小さな吸血鬼がろうそくの周りを飛び回り、チラチラと炎を揺らす。


「確かにつまらない」


いつもと違う匂いがする、そんな気がした。


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