かがみよ、かがみ

めらめらと、炎が揺らいだ。


過去に飛んでいた僕の頭の中が、一気に現実へと引き戻される。

僕は古びた椅子に腰掛け、窓の横に掛けられた鏡を見据えた。

古い額縁にはめ込まれた鏡は所々が白く曇っていて、

いくら拭いても美しい銀色には戻らなかった。




古い燭台や作業台。

壁には、埋め込まれるように古い本棚が並び

いつの時代の物かわからない茶色い本や

古びた雑貨に埋め尽くされていた。



古びた鏡越しに見るいつもの部屋の中。



ほんの一瞬鏡から目を外した。

瞬きをしただけかもしれない。

その間に眠りに落ちてしまったのかもしれない。



次に鏡の中を見た時。


鏡の中には扉があった。

おばあちゃんの声が頭の中で響く。



――あの扉を見たらお前も魔法使いの仲間入りだ――



ひゅう、と。

風が吹いて、冷たい空気が頬を掠める。

夢から覚めたのか、瞬きをしただけなのか。


次に鏡を見るとそこはただの部屋。

鏡の中に、扉はなかった。


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