こどものきおく

この部屋には秘密があるんだよ。

あの鏡の向こうに、見たことがない扉が映ることがあるんだ…




小さかった頃の記憶がだんだん蘇ってくる。


僕は、古い木でできたテーブルから

頭の半分を覗かせて、

窓際にいるおばあちゃんを見上げていた。


照明は部屋の中央から垂れ下がる

小さな裸電球と

部屋中に置かれたろうそくの明かりだけ。


薄暗いのに、温かい。


やわらかい空気の部屋の中

ろうそくの灯りが

おばあちゃんの横顔を照らしていた。


口元にある大きいイボや

顔に刻まれた深いシワが

よりいっそう浮き彫りになり少し怖い。



テーブル位の背丈しかなかった僕は、

いつの間にかこの小屋に舞い戻って

ろうそくを作って暮らしていた。

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