第11話 人生の棋譜

《藤田棋聖4連勝! 史上最年少での2冠達成です!》



「お兄ちゃん、藤田さんってスゴイよね! あんなに若いのに!」

「ああ。藤田くんってさ、前に彼らしいエピソードを話してたけど、それが強さの一

端を物語っているのかもしれないな」


後片付けがてら、食堂のテレビを眺めて談話する藤原兄妹。


「へえ、どんなの?」

「彼はさ、何歳から何歳のあいだでこれこれをするって人生の計画を事細かに立てて  るんだよ。死ぬまでの長期のスパンでね」


「ははは、棋士さんらしいといえばらしいね」

 苦笑いをするマナ。


「100歳までの長寿を全うしたとしても一年に一回の目標を立てるなら100個だけ。

そんなに多くはないな」


「え~、でも人生って何が起こるか分からないし、そんなにみっちり計画を立てても

うまくいかないと思うけど」


「こうは考えられないか? 自分の駒を動かすってのは自分次第だからいくらでも密

な計画を立てられる。そしてお前の言う何が起こるか分からない要素ってのは相手

の駒の動かし方ってわけだ」


「なるほど・・・」


「それらも踏まえた上で人生の一手を打っている気がするな。棋士たちは危機管理の

想定範囲が桁違いに広いんだよ」


「藤田さんは棋士の中でもさらに想定範囲が広いってことね」

「ああ。彼のことだ、一日に50個のコマンドをこなすとして、掛けることの100年分

はすでに頭に入っていそうだ」


「一応聞いとくけど、全部で何手あるの?」

「ざっと182万6200手だな」


「対戦相手の総コマンド数は・・・?」

「1京4000兆手ってとこだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る