第8話 テレイグジスタンス

 日本の民法が改正され、満15歳を迎えれば成人とみなされることとなった。自動車免許も15歳から取得OKである。


 メシヤはこの夏に16歳になっており、教習所合宿で足早に自動車免許を取得していた。希望する者は船舶免許・航空免許も続けて取れるので、メシヤは立て続けにライセンスを獲得した。


 こんなにも免許取得が容易になったのには、ワケがある。自動車学校等でネックになってくるのは、実技講習の予約の取りにくさにあった。連続で実技をクリアしたくても、物理的時間的制約があった。


 だが、近年これらを解消する発明があらわれた。テレイグジスタンスである。これはもともと有人ではとても行けない惑星探査などにおいて、遠隔の人間が触覚や聴覚・嗅覚などをリアルに感じるために考案されたモノだが、この技術が免許取得のために広く知れ渡ることとなった。


 使うのは駐車場に停めてある親の車を使うことが多い。そこで、実際に走ることはせずに、ドライブトレーニングモードに合わせ、お好きな仮想のドライビングコースを好きなだけ走って走行感覚を身につける。自信が付いたら、認定試験だけを実地で受けに行く。これで大幅な免許取得期間の短縮が出来るようになったのだ。


 船や飛行機はさすがに自前のモノと言うわけには行かないが、操縦席の簡易的な組み立てキットが格安で売られている。そこでも、セーリングモード、フライトモードの設定をし、修練を積む。あとは自動車の時と同じように、実地だけ港や空港にライセンス試験を受けに行く。


 メシヤは非凡な才能を発揮し、なんなく試験をパスしていった。驚異的な飲み込みの早さであった。


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