第7話 夢でも見てるみたい。君が落ち込むなんて

「イエスくん、どう? メシヤの様子」

「ああ、まだ駄目だな。放心状態だよ」


 デスヘヴンへ颯爽と出発したメシヤたちだったのだが、そこでメシヤが見たモノは、絶望と破滅しかない地獄の最奥だった。


 イエスとマリア、それから裁紅谷姉妹とマナは、転移したワシリイ大聖堂内部にいたのでその光景を目の当たりにしてはいないが、先発隊のレオンとメシヤは、どうやら地球ではお目にかかれない代物を見たらしい。


「お兄ちゃん、すぐ立ち直ってくれるといいけど・・・・・・」

 マナがけなげに心配する。

「メシヤさまならきっと大丈夫ですわ!」

「そうだヨ!またいつものようにジョークで笑わしてくれるヨ!」

 裁紅谷姉妹も口ではそう言っているが、他ならぬメシヤのこと、心配の色は隠せない。


「いま奈保くんが話してくれているから、それを待つしか無いわね」

 マリアの表情には気丈さがあらわれていた。



「レオンくん、あれは、、、本当にこの世で起こっている出来事なのかい?」

「はい、残念ながら現実です」

 レオンの声かけに、メシヤも重い口を開いた。


 惑星デスヘヴンの世界総統府がかつて存在した場所、ハイジャージー。暴虐・略奪・破壊・強姦・殺人、ありとあらゆる悪徳で世界が埋め尽くされていた。


「レオンくん、僕にはどうしていいのかまったく分からないよ。現実逃避なのかも知れないけど」

 メシヤらしくない気弱さであった。

「それはごもっともです。ですが、私はどうしてもこの惨状をメシヤくんに見せなければならなかった。それは、地球のためでもあるのです」

 レオンが発した言葉を受け入れ、目を細めるメシヤ。


「デスヘヴンの現状は、超古代のアトランティス帝国がたどった道筋とほぼ同じです」

「レオンくん、言ってたね。デスヘヴンは科学技術の粋を極めて、完璧な政治・完璧な都市国家の運営がなされていたって」

「その通りです。ですが、どんな好景気もいつまでも続かないのと同じで、順風満帆に見えるところにも綻びの種が生まれていたのです」


「ひょっとして、あの光景を見せてくれたのは、地球の今後への警告だったのかな?」

「メシヤくん。あなたが介在しない世界では、ロックフォーゲル大統領が世界総統となり、地球は大繁栄を築きます」

「それは、喜ばしいことなんじゃないかな」

「ですが、その行く先は、メシヤくんが先ほど見たデスヘヴンの末路と同じなのです」

「!」

メシヤの目に精気が蘇る。

「レオンくん、何か策はあるのかい?」

「ふふっ、あなたが年少のころに書き溜めたシナリオノートの通りですよ」



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