第6話 双頭の鷲
「ボウスハイトさま」
分厚い書物のページを繰るのをやめ、側近に目をやるロックフォーゲル。
「メシヤは無事にデスへヴンに到達した模様です」
「そうか。速かったな」
メシヤのことはまるで身内であるかのように気遣いを見せている。
「Mr.ナボはあのまま泳がせておいても大丈夫なのでしょうか?」
「あの男でなければ、メシヤの先導役は務まらないだろう。歴史を根本から破壊するやも知れない少年につけるには、タイムキーパーたるナボこそがふさわしい」
――新首相官邸、Castle Of Kitaise――
(メシヤくん、イエスくん、どうか無事でいてくれよ)
鷹山・メシヤ・イエスの三人が写ったフォトフレームを眺めて、つぶやく新総理。
いつぞやの鼎談を思い出す。
「日本人がバラバラになった主たる原因のひとつに、男女間と世代間の分断があります」
メシヤのこの言葉に思い当たる節があるのか、身を起こして聞く体勢を整える鷹山。イエスも次の言葉を待ち構えている。
「具体的なトラブルの事例を持ち出し、なかばあきらめの言葉として、男女はわかり合えないだとか、ジェネレーションギャップだからとまとめられますが、本当にそうでしょうか?」
「違う、と信じたいところだな」
鷹山も相槌を打つ。
「ネットニュースやSNSは速報性ゆえにありがたがられますが、ずっと見ていると扇情的な情報ばかりでまともな感覚が損なわれていきます」
「男女間・世代間の溝を埋めるどころか、ますますギャップが深くなるな」
イエスも同意する。
「どんなささいなことでも、言葉を交わして気持ちを共有できる瞬間があるはずなのに、これでは生き甲斐を感じにくくなってしまいます」
「恋人はいらない、結婚したくないって人も増えているようだが、それは本心じゃないだろうしな」
イエスがメシヤの意見に付け足す。
「そうだよね、そういう人たちでもネット上で話し相手を求めたり、ドラマやアニメの登場人物に熱を上げてたりするから、異性に興味が無いわけじゃないんだよ」
「国作りの土台は家庭の構築から、だな。独身を貫く人を責めるつもりもないし、縁に巡り逢えないこともある。だが、だからといって誰に対しても結婚しなくていいとは言えないし、それを推し進めた先に待っているのは国家の構成員たる国民の消滅という当然の帰結になる」
鷹山が持論をぶつ。
「はい、そうならないために僕が考えているのが・・・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます