第5話 多世界解釈
オリジナルのメシヤたちが地球を離れているあいだ、メシヤたちのコピーが粗相をするのではないかと心配された方もいることだろう。だが、コピーたちは中々に優秀だ。”主人たち”の日常をそつなくこなすだろう。残された人々はどこか物足りなさを覚えるのだが、元々のメシヤたちに対する記憶も置き換えられているため、問題なく進行していく。
話が前後するが、スターゲイト転送の仕組みはこうだ。地球に残った肉体がメシヤたちのオリジナルの肉体。デスヘヴンに転送された肉体がメシヤたちの肉体コピー。
だが、霊体のほうはデスヘヴンのものがメシヤたちのオリジナルであり、地球に残された肉体の中にある霊体がメシヤたちのコピーである。
メシヤたちがデスヘヴンに出立した時点で、地球は元の歴史とは違う時を刻んでいく。タイムツリーの中で、世界が別の枝葉へと移っていく。枝分かれの瞬間は刻一刻と行われている。決断の時に、人生の節目に。右の道を通って帰るか、左の道を通って帰るか、あるいは引き返すかのその分かれ目に。
宇宙旅行は、それ自体が時空間を移動することを意味する。地球のある地点と他天体の同時刻という言葉は、もはや意味をなさない。
一夜眠るたびに、夢の中で時空のゆがみの再調整が行われる。今日の自分と明日の自分は別のワタシだ。
こんな重要なことを話さずに、レオンはメシヤたちをかどわかした。だが、分岐を繰り返したタイムツリーが、どこかで本筋の幹にたどり着くことがある。そのとき人々は懐かしさを覚えることだろう。
長々と述べたが、オリジナルのメシヤなき後の地球も、物語は進行する。人々の意識からは、”彼ら”のことが空白になっている。
つぎにメシヤたちが地球に戻るのはいつになるやら。
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