第4話 「不良少年とキリスト」(坂口安吾)
昔は教育現場に於いて「体罰」に当たるものは極めて普通のことでしたし、当然のことながら職場などでも往々にして見られる様でした。学校では「廊下に立たせる」とか「グランド10周」とか「正座10分」とか、勿論「ゲンコツ」や「ビンタ」も当たり前のことでした。医者の世界でも一秒を争う事態の為なのか口よりも手の方が早く、(器具の名称を思い出せずに)「アレ」と言ってその器具がすぐに出てこないと足蹴にして倒し、更に「顔が笑っている」と言って顔を踏みつけたなどという「噂」もある程です。
以前の「バイキング」について「エンタメRBB」さんの平成29年10月の記事の引用です。 https://www.rbbtoday.com/article/2017/10/03/155048.html
「3日放送の『バイキング』(フジテレビ)では高校生による教師への暴行の様子が動画で撮影、拡散された事件を特集。生徒から暴行を受けたにも関わらず教師からは何もなす術がない現状を取り上げ、小籔千豊が怒りを露わにする一幕があった。
番組では先月28日に福岡県の私立高校で起きた、高校1年生の男子生徒による教師への暴力事件を特集。事件の発端は授業中iPadで授業とは関係のない動画を見ていた生徒を教師が注意したことだったという。逆上した生徒は教師に暴行、その場面が他の生徒による投稿動画として世間に広まり、事件が発覚した。この日の同番組ではイラストでの状況説明だったが、暴行を続ける生徒に対し教師は一切手を出していないのだという。
小藪は暴力をふるった生徒に責任があるのはもちろんのことであると前置きしつつ、「先生たちに権限を与えて来なかったこの(現代の)風潮がこういう風(暴力事件)にさせた」と当該の生徒ばかりでなく社会の風潮を非難。「先生にもうちょっとどつく権利を」「(現場の)先生の判断で職員室に呼び出してボコボコにしてもいい」と持論を展開し、一方的な暴力を否定しつつ、教師生徒間のパワーバランスに欠けた現代の教育現場への思いを語った。
また番組に出演している弁護士は、仮に生徒から暴力を受けた教員が生徒へ「正当防衛」としてやり返した場合でも、「体罰禁止」の法律に反する故懲戒処分になる可能性を示唆。法律の観点からも教師の生徒への正しい対応を「難しい」と言葉を濁した。MCの坂上忍らスタジオ一同はこのどうにもならない教育現場の現状に眉間に皺を寄せ、ため息をつく場面も映し出された。」
(自分はその番組を見ていたのですが)一方で一緒に出演していた中田宏さん(元横浜市長)は、「23歳の教師は職員室に駆け込んで他の教師の応援を受けて6-7人の教師で教室に戻って生徒を指導すべきだった」とおっしゃっていました。それに対して小藪千豊さんは「言うだけですか。それで本人改めますか。」と反論され、「その考え方はエリート学校を出た人だから」と言い放っていらっしゃいました。「自分らの様な底辺の学校に行っていた人間からすればそれだけで変わる訳がない」ともおっしゃっていました(これらの会話は自分の記憶を基にしたもので正確でないかもしれません)。中田宏さんはそれを聞かれても自説を曲げられませんでした。
その少し前にも日野皓正さんの「往復ビンタ」騒動もありました。日野さんは中学生バンド「ドリームジャズバンド」を指導していたのですが、演奏会の終了近くのソロパートの自己紹介演奏でドラムの男子の演奏が一向に終わらず、見かねた日野さんが近づき「次の奴もいるんだぞ」とたしなめたものの終わらず、ドラムスティックを取り上げて放り投げても今度は手でドラムをたたき始めた為に往復ビンタをしたのですが「復」は空を切っている様に見えました。この画像が広がって問題となったのですが、その様子を見ると自分には到底「口で言って」どうにかなる様には見えませんでした。
(こちらも自分は番組を見ていたのですが)その件についてダウンタウンの松本人志さんは「ワイドナショー」で、「この中学生の彼が、叩かれたことをクソっと思っていたら、指導として間違っていた。反省していたら指導として正しかった。中学生の心の中が答えだと思うんですよね」とおっしゃり、「我々の世代は体罰受けてきたけど、今の時代はありえへんってみんなよく言うじゃないですか。なぜ今はダメで、昔はよかったんですか? 明確な理由が分からないんですよ」とおっしゃっていました。
確かに、自分が子供の頃は親に張り飛ばされることは極めて当たり前のことでした。従って、先生からも悪いことをすれば張り飛ばされることも当たり前でした。そして、自分には体罰を無くすことと、運動会などで順位を付けなくなることと、根底は同じ様に思えています。体罰を与えられた生徒やそれを見ていた生徒、1等賞から3等賞に入れなかった生徒、の心的外傷を思いやってのことなのだと思いますが、果たしてそれでいいのでしょうか(勿論体罰で肉体的外傷が皆無ではないのも分かっています)。
果たして、「口だけ」で教育はできるでしょうか。上記の子供達が必ずしも「不良少年」という訳ではありませんが、「良」か「不良」かで考えればどちらでしょうか。大人に対して「反抗的な態度」をとる子供に大人が雁首揃えて諭して効果があるものなのでしょうか。結局「手に負えない」となって見捨てられるのが落ちではないのでしょうか。私立であれば退学などにも発展してしまうのでしょうか。
警察の介入がどうの、と言いますが、本来学校内も治外法権ではないはずです。それでも教育の名の下に自治的なものを目指すのであれば、教師一人一人に任せるのではなく、学校として法律的なものや裁判的なものを作るべきです。それこそが教育ではないのでしょうか。
同時に、では現実の社会はどうなっているかと言うと、法律があるから、罰則があるから、他人の目があるから、立場があるから、仕事があるから、家族があるから、普通「不良」にはならない訳ですが、交通法規で言えば、ちょっとスピードを出し過ぎるとか、赤信号ぎりぎりで通過するとか、一旦停止を十分停止しなかったとか、それらで「運悪く」摘発されるとどうなりますか、どう思いますか。現実の世界では一定以上の刑には「体罰」がありますし、軽くても「免停」とか「罰金」があります。「口だけ」で済まされることはまずありません。
教育現場での生徒から教師に対する威圧や暴力などに対する対応が、現状の「体罰禁止」が続くのであれば、それは教師を見捨てることになるのでしょうか、それとも生徒を見捨てることになるのでしょうか。最初に揚げた福岡県の高校の新任教師は、SNSで動画が拡散されなければその後どうするつもりだったのでしょうか。多くの生徒の前で生徒から虐待され、プライドを傷つけられ、そのまま何も無かった様に教師を続けられたでしょうか。逆に、SNSで同僚をはじめ多くの人間に知られてしまった今どうしているのでしょうか。誰かに支えられているでしょうか。一方の生徒は逮捕された訳ですが、もし拡散が無く罪に問われなければ彼は自分のしたことがどういうことかを知らずに成人したのでしょうか。正に武勇伝を気取っていたのではないでしょうか。現在の教育について考えてみました。
「不良少年とキリステ」
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