三「カミムスヒ」

 古事記において、高御産巣日神たかみむすひのかみいで誕生した三番目の神が、神産巣日神かみむすひのかみである。

 日本書紀では、神皇産霊尊かみむすひのみことと表記している。

 また、造化三神ぞうかさんしん別天ことあまつ神の一柱ひとはしらとされている。

(「アメノミナカヌシ」を参照)



 配偶神のいない独神ひとりがみであり性別もないが、タカミムスヒを男性的な神格であるとするのに対して、カミムスヒは女性的な神格であると考える説もある。

 また、同じ性格を持つ二柱だが、タカミムスヒが高天原たかまのはら(天)を中心として神話に関わるのとは対照的に、カミムスヒは出雲国いずものくに(地)にまつわる神話に多く登場する。



 殺されたオオクニヌシを蘇生されるために「キサガイヒメ」と「ウムギヒメ」を派遣したり、のちに国づくりを始めたら今度はスクナビコを派遣したり、オオゲツヒメの死体から生えた五穀を取ったりと、記紀神話では裏からサポートする役回りに徹している。



 出雲国風土記ふどきにしか登場しない神々の祖神として、出雲国風土記の至るところにも名前が散見される。

 出雲国風土記での記述は以下のとおり。



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 生馬郷いくまのさと郡家こほりのみやけの西北一十六里二百九歩。神魂命かむむすひのみこと御子みこ八尋鉾長依日子命やひろほこながよりひこのみことりたまひしく、「が御子、平明やすらかにしていくまず」と詔りたまひき。かれ生馬いくまひき。


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 加賀かか神埼かむさきいはや有り。高さ一十丈許つゑばかり。周り五百二歩許あしばかり。東と西と北はかよふ。所謂いはゆる佐太さだ大神おほかみ産出れまししところなり。産出れまさむ時に臨みて、弓箭ゆみやしき。その時、御祖みおや神魂命の御子、枳佐加比賣命きさかひめのみことぎたまひしく、「吾が御子、麻須羅神ますらがみの御子にさば、亡せし弓箭」と願ぎ坐しき。その時、角の弓箭、みづまにまに流れづ。その時、弓を取りて詔りたまひしく、「は、弓箭にあらず」と詔りたまひて、たまふ。またかねの弓箭流れ出ですなはち、待ち取らし坐して、闇鬱くらき窟なるかも」と詔りたまひて、射通いとほし坐しき。御祖支佐加比賣命きさかひめのみことやしろ、此処にいます。今の人、の窟のほとりを行く時に、必ず声磅礚こえとどろかしてく。し密かにかば、神あらはれて、飄風つむじ起り、行く船は必ずくつがへる。


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 楯縫たてぬひなづけし所以ゆゑは、神魂命詔りたまひしく、「五十足いそだるあめ日栖ひすみの宮の縦横の御量みはかりは、千尋ちひろ栲紲たくなは持ちて、百八十結ももやそむすびむすげて、此の天の御量持ちて、天の下造したつくらしし大神の宮造みやつくたてまつれ」と詔りたまひて、御子、天御鳥命あめのみとりのみこと楯部たてべて、天下あまくだたまひき。その時、退まかくだ来坐きまして、大神の宮の御装みよそひの楯、造り始め給ひし所、これなり。りて、今に至るまで、楯、ほこ造りて、皇神等すめがみたちに奉りいだす。故、楯縫と云ひき。


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 漆治郷しつちのさと。郡家の正東五里二百七十歩。神魂命の御子、天津枳比佐可美高日子命あまつきひさかみたかひこのみこと御名みなを、又、薦枕志都治値こもまくらしつちちと云ひき。此の神、さとうちいます。故、志丑治しつちと云ひき。神亀じんき三年、字を漆治とあらたむ。即ち正倉みやけ有り。


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 宇賀郷うかのさと。郡家の正北一十七里二十五歩。天下造あめのしたつくらしし大神命おほかみのみこと、神魂命の御子、綾門日女命あやとひめのみことあとらしき。その時、女神うべなはずて逃げかくりし時、大神うかかひ求め給ひし所、此是これこの郷なり。故、宇賀うかと云ひき。


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 朝山郷あさやまのさと。郡家の東南五里五十六歩。神魂命の御子、真玉著玉邑日女命またまつくたまのむらひめのみこといましき。その時、あめ下所造したつくらしし大神、大穴持命おほあなもちのみことひ給ひて、毎朝あさごとに通ひ坐しき。故、朝山あさやまと云ひき。

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