掘り返された記憶



便利屋の入口には、ドラマに出てくるような警察官が3人。鑑識の人だろう。明るい照明で地面を照らしながら、写真を撮ったり何かを拾ったり。


便利屋の応接ソファーには、偉そうに足を組んだリョウタが座って一服している。新しい物好きのこの男にお似合いの最新の電子タバコのようだ。


その間、ケイは部屋の隅にある水道からポットに水を入れてお湯を沸かし、チラチラと横目でリョウタを見ながらコーヒーを淹れていた。僕は背中に血がしみ込んだ服を脱ぎ、いつものジャージに着替えてリョウタの向かい側に座る。


「で。 繁盛してんの?この店」


「おかげさまで。きっちり税金も払ってるし。危ないこともしてないつもりだけど」


ふーん。


リョウタはケイが出したコーヒーをすする。リョウタは僕の短い大学時代の貴重な友達だ。順調に大学を卒業して、公務員試験に合格。警察官になって、部下を引き連れて現場を仕切る。

見た目は本当に頭がよさそうで、この人、絶対神経質なんだろうなぁって感じ。人を見下した感じというか、妙な威圧感を身にまとっている。部下は本当にかわいそうだな。


「じゃああれだな、刺された奴から聞いてみないと何もわかんないってやつだ」


「そうだよ。たぶん依頼人のカトウって人だけど顔とか知らないし。ツカサなら顔知ってるだろうからツカサに聞いてよ。あ、あと最後に鞄が何とかって言ってたよ。なんか盗られたのかな」


僕はカトウの名刺の裏表をスマートフォンのカメラで撮り、リョウタに渡した。その後、僕とケイはもう一度今夜の行動を聞かれ、いつの間にかリョウタの後ろに立っていた警察官がそれをメモしていた。


そうしてリョウタたち警察は、下の現場検証が終わったからとそそくさといなくなり

便利屋の応接スペースには、ぐったりしたケイと僕だけが残った。



「タクミさん。オレあの人苦手」


ケイはリョウタの上から目線が気に入らないらしい。


「まぁね。慣れればすごいいいやつだから。僕もあいつが出てきてびっくりしたし」


カトウのポケットから見つけた紙切れを見ながら僕は答えた。


「それ、あの人からもらったんでしょ?いいんですか、警察に言わなくて」


『内部抗争か?死傷者多数の爆破事件』


その紙切れは週刊誌の記事のようだ。人相の悪い男の顔写真と、ビルのような建物の写真。


「この記事ね、僕知ってるんだ」



そう、僕がこの便利屋で働くきっかけになった、15年前の出来事。



あの日、広場に来ていなければ関わらないで済んだ出来事だ。


「知ってるって、さらにヤバいじゃん。何なの?それ」


僕はケイに話し始めた。サトウ便利店の昔話を。




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