第4話
-おかけになった電話番号は電波の届かないところにいるか、電源が入っておりません
また…綾のスマホに何度かけても繋がらない
具合悪くて電源を切っているか、充電切れたまま寝ているのか…
どちらにせよ、元気ではない証拠な気がして、心配で何度もかけてしまう。
明日学校で会えるかも分からない状況に、苛立ちさえ覚える。
これ以上は諦めよう。あっちからかけてくるのを待とう。
スマホを机に置いて、椅子に座り読みかけの雑誌を開いた。何度も読んだ春夏のお洋服特集ページをまた読み返した。イチゴ柄にミモザ柄、ギンガムチェックに淡いパステルカラーが所狭しと並んだ大好きなページ。今は全く頭に入ってこない。
………どれくらいそうしていただろう。
スマホ画面は0時を告げていた。
その時、見慣れた名前の着信があって、アヤは物凄い速さでスマホを手に取ると、応答ボタンを押した。
「もしもし??綾!?」
「アヤ…心配かけてごめん」
「そんなの、全然大丈夫だよ…って、今どこにいるの?」
綾の声の後ろから雑音が聞こえる。どうやら外に居るようだ。
「…外にいる」
「どこ!?こんな時間に!迎えに行くよ」
「…いいよ。大丈夫」
「大丈夫じゃないよ。すぐ行くから!どこにちるの?」
「ねぇアヤ…私、産まれてきてよかったのかな」
「何言ってんの!」
綾…綾…今すぐ駆け寄りたい。
「綾、どこにいるか教えて。教えてくれなかったら、私、闇雲に探し回るからね!」
そう言い切ると、綾は困ったような様子で「小さい頃よく遊んだ公園」と教えてくれた。
「今から行くから待ってて」
そう言うが早いか家を飛び出した。
玄関先でママが「こんな時間にどこ行くの!?」って大きな声で呼んでる。
ごめんね、ママ。今はそれどころじゃないの。
外は雪がチラついていた。
こんな夜には余計一人にはさせておけない。
こんな美しい夜に一人で居たら、綾が消えてしまいそうな気がする。
ハァハァッ
綾と違って私は運動も走るのも大の苦手だ。
それでも走った。全速力で走った。呼吸の仕方が下手なのか、公園に着く頃には喉が悲鳴を上げていた。
「綾!」
綾は砂場に繋がる遊具のトンネルの中に居た。
「アヤ…」
私を見るなり、綾は困った顔で笑った。
「本当に来るなんて…ダメだよ、こんな時間に女の子が外に出たら」
「綾だって…」と、言いかけてやめた。だって綾は…
「女の子じゃない。私は…女じゃない、女でいたくない。アヤは気づいてたでしょ?」
「………」
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