(八)闇きに松どもを灯して
一旦帰宅してから、日没を待ち、小学校へ戻ってきた。いままで龍が
一列に並んだ灯りが煌々と輝き、その中央では彩が主導し、精霊たちに指示を出していた。
「……遅いよ」「すみません」
「平気?」「……はい。おかげさまで」
「そう、ならよかった。まあ、
移植ゴテを手に取った彩は、いそいそと作業に戻っていった。その様子を見守るように、火の玉が彩の手元を照らしている。龍は火の玉へと視線を動かす。
「あの……この光は?」「ああ。あたしの
なるほど。いわゆる
「
「言ったでしょう? あたしは
なに当たり前のことを、とでも言いたげな彩の表情を見て、龍は
「それじゃあ、あの結界は対怪物用ではなく……やっぱり、五瀬を校舎から出さないためのものなんですね」
「……さあね」
もとどおりとなったフェンスを乗り越え、彩はどこからともなく取り出した二本の苗を植える。そのフェンスの上には、一匹のキツネが、ちょこんと乗っかっていた。
「なにも、おかしなことはなかった?」
「はい。わたしが行ったときには、もう宿題を始めていましたよ」キツネが報告すると、ふふ、と彩は
「まあ、大丈夫でしょう。腐っても『シンシ』なら」
シンシというのは、神の使いと書く、あの
「ああ、紹介しとくね。こちら
あまりに簡潔な紹介で、それ以上の話は広がらず、ふたりとも、お見合い初心者のように、ただただ頭を下げ合うことしかできなかった。弥兵衛と紹介されたキツネから受け取った缶ジュースを、龍のほうへ放り投げ、すっぽりと手のなかに収まった様子を見て、彩は「ナイスキャッチ!」と笑みを浮かべる。
「あ、ありがとうございます……」
感謝を述べつつも龍は、ラベルに書かれた解読不能な文字列を見て、得体の知れなさに
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