(三)雨中の熱戦となりぬ
暗いだけならまだしも、雨が降っていると物音がかき消され、相手がどこにいるのかわかりづらい。裏口を出た彩は、背後を取られないよう壁伝いに前へ進んだ。パトカーだろうか、赤い光が
裏口から離れてすぐのところ、校舎の外壁が崩れた、その
「傷口は雨で洗い流されているね。あとは、それを傷口に
その一連の行動を見て、龍は驚いたような表情をした。蒲黄を受け渡し、彩は「安静にしてて」と言い残し、その場を去ろうしたが、「お待ちください!」と龍に呼び止められた。
「ん……?」
「相手は
「そう……」
彩は前かがみになって、ぐいっと顔を近づける。どことなく、
「あたしは
「はい、承知しています。でも、わざわざ
「勘違いしないで」彩は深く息を吐いた。「あたしは保食
「……えっ?」
「
用件を簡潔に伝え、雨のなかを走り出す。標的である龍を見失っているせいか、ぱたりと攻撃が
想像しているよりも
今度は逆方向から、足元を狙った攻撃が飛んできて、彩はしゃがんでいた状態から、一気に膝を伸ばす。田んぼの境界に設けられたフェンスは、見るも無残に真っぷたつへと叩き切られた。雨水が四方八方に弾け飛ぶ。用水路を
「……いただきます」
そう
狙われているのは自分だという、龍の言っていたことが自意識過剰でないなら、彩の頼みに従って、校舎のなかへと入っていった龍を襲うため、宿儺も校舎へと向かうはずだ。そこには、もちろん最も危惧すべき稲穂もいるし、ほかの大勢の人たちが詰めかけている。是が非でも食い止めておかねばならぬ。軽々とした身のこなしで、グラウンドへと舞い戻った彩は、そっと目を閉じて耳を澄ませた。
なにかが猛スピードで近づいてくる音が聞こえたため、最小限の動きで身を
暗がりのなかに、四メートル弱ある宿儺の巨体が、ぬっと姿を現した。宿儺の右足に向かって突撃すると、
刺さった異物を振り払おうとしてか右足を高く蹴り上げたため、彩は宿儺の足の甲をステップにしてバク宙する。なんとか着地はできたが、休んでいる暇はない。振り下ろされた太刀を、ふたつの小刀で受け止める。金属が
その場に
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