第133話『嵐山トンネル』


魔法少女マヂカ・133


『嵐山トンネル』語り手:晴美     





 プシューーーーーーー



 トンネルに入ったところで北斗は停止してしまった。


「機関オーバーヒート、足回りに固着物あり、しばらく動かせない」


 友里が示したモニターには、釜の部分が真っ赤になった北斗の断面図が出ている。


「出力が戻るまで停車、トンネルの出入り口方向の警戒を厳にしろ」


 北斗のスペックから言うと、京都駅からここまでの戦闘は十分許容範囲なのだが、忍者や牛頭馬頭どもの瘴気は、釜だけでなく足回りも疲労させてしまった。しばらく停車して回復させなければならない。


 クルーたちも慣れたもので、機関や足回りをクールダウンさせながら、嵐山口から二百メートル入ったところで、模範的な停車を決めた。


「瘴気が固着しないうちに除去するぞ」


「「「ラジャー」」」


 友里がツールボックスから瘴気落としのハンマーを取り出して、みんなに配る。


「え? オレもやるのか?」


 ブリンダがプータレるのを目力で押さえ込み、クルーは運転室から飛び出る。


「うちも、手伝わしてもらいますえ」


「気持ちはありがたいけど、その巫女服じゃ」


「ほなら、これで……えい!」


 スピンしたかと思うとウズメは、ちょっと昔の体操服姿になった。胸には『うずめ』と平仮名のゼッケンが付いている。


「漢字の天鈿女命やと読めしまへんやろ」


「あ、いや、まあ、全員女子だからいいんだけどね(^_^;)」


 体操服と言ってもワンサイズ小さ目なブルマ姿で、同性のわたしが見てもエロい。だれかに似ていると思ったら、アキバでメイドをやっていたころポップなんかで見かけたスーパーソニコだ。


「あたしは、初期設定が天岩戸のあれどっしゃろ……胸乳をば掛き出で裳紐をほとに忍ばし垂れて踊りまくった姿どっしゃろ、どんなコスになっても、こないなりますのんや」


 カンカン カンカン カンカン


 トンネルに瘴気を掻き落とすハンマーの音が響く。


「ウズメさんて、何をした神さまなんですか?」


 ノンコが作業の手は休めずに聞いてくる。調理研の三人は日本神話など習ったことが無いのだ。


「天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸にお隠れやした時に、岩戸の前で、ぶっ飛んだダンス踊らしてもろて、天照大神さんを無事にお出ししたんどす」


「えー、どんなダンスなんですかあ?」


「せやかかいに……」


 ウズメは瘴気を掻き落とすハンマーの音に合わせて、天岩戸の下りを説明する。いや、説明というよりは、ワンマンショー、これでは作業がはかどらないと思いつつも見入ってしまう。


「ウズメさんて、アキバでメイドやってもナンバーワンになれそう♪」


「メイドどころか、アイドルだってできそう(^^♪」


「ちょっとR指定どすけど♪」


 クルーたちものってくる。


「あたして、そっち方面の神さまでもあるんどすえ(^▽^)/」


 そうだ、車折神社というのは芸能の神さまでもあるんだ。


「でもさ、てか、だったらさ、天岩戸とかいうの開けたのなら、千曳の岩もどうにかなるんじゃない?」


 サムが、確信的なことに思い至った。


「え、あ、黄泉比良坂(よもつひらさか)にあるやつ? 軽いもんどすえ(⌒∇⌒)」


「じゃ、手伝ってもらったら?」


「あ、岩どけるだけやったら」


「「「「「「ほんと!?」」」」」」


「へえ、太秦ではご迷惑かけましたよってに」


「あ、じゃ、急いで瘴気落とそう!」


「千曳の大岩どしたら、黄泉比良坂まで道つけますよ」


「そんなことができるのか!?」


「女子の細腕やさかいに、蒸気機関車通すほどのは無理どすけど、うちの他に二人ほどテレポさせるくらいには」


「じゃ、わたしとブリンダが行く!」


 正魔法少女の二人が手を挙げた。



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