第132話『太秦あたり・3・天鈿女命(アメノウズメノミコト)』


魔法少女マヂカ・132  

『太秦あたり・3・天鈿女命(アメノウズメノミコト)』語り手:マヂカ 






 弥勒さん……弥勒菩薩さん……弥勒菩薩半跏思惟さん



 ウズメさんが弥勒さんに呼びかけるが、弥勒は居ねむっているのか反応が無い。


「ミロクというのは恥ずかしいのか?」


「恥ずかしいから、寝たふりなの?」


 ブリンダとサムがスカタンをかます。


「恥ずかしいのではなくて半跏思惟(はんかしい)、片足だけの胡座で考え中ってことよ」




 パコーーン




「あたしが出てきたのに寝たふりはないでしょ!」


 ウズメに張り倒されて、目を白黒させ、ゆがんだ冠を直すミロク。


「え、あ、あ、あたし?」


「弥勒菩薩半跏思惟ってのは、あんたしか居ないでしょ!」


「あたしは広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟よ、中宮寺にも弥勒菩薩半跏思惟が居るから、分かんな~い(^_^;)」


「ここいらじゃ、あんたしかいないでしょーが!」


「でも、入試とかじゃ、キチンと書かなきゃ正解にならないしい」


「じゃあ、広隆寺弥勒菩薩半跏思惟!」


「えと、拝観時間には、まだ間があるんですけどお……」


「ここは裏次元だから、時間はたたないし、観光客もやってこないよ!」


「あ、あ、そうなの。じゃ、もうちょっと寝てよっかな、ここんとこ考え事多すぎてえ」


「ちょっと待て!」


「あ、痛い痛い、耳引っ張らないでくれるぅヽ(`Д´)ノ」


「おまえの耳たぶ長くて引っ張りやすい」


「もう、激おこぷんぷん丸だよ!」


「古い言い回し……って、それはいいんだ。いや、よくない! 激おこでごまかすな! おまえ、取り巻きたちに魔法少女を攻撃させただろ」


「え? え? ああ、なに、あんたたち!」


 たったいま気が付いたように、忍者たちと牛頭馬頭たちを睨みつける。


「いや、弥勒さまは攻撃命令を出されました。我らは、そのご命令を実行したまでのこと」


 服部半蔵が異を唱える。


「命令? うそよ、いつ、あたしが命令したあ?」


「かように、頬を((^^ゞ)」


「え……あ、ああ、あれはね、ちょっと痒くなったからあ、ごめんね、人騒がせでえ(^_^;)、てへぺろ」


「てへぺろすんな!」


「えと、そーゆうことだから、あなたたち、通っていいよお」


 ええんかい!


「ミロクさまあ、ウズメさまあ」


「「なに!?」」


 黒牛頭が折れた車軸を持ち上げて不足を言う。


「車軸が折れちまって、仕事にならないんすけど」


 黒牛頭がリーダーだったようで、牛頭馬頭どもが、いっせいに車軸の折れを持ち上げる。


「ああ、ごっめん! それはあたしだわ。あたしって車折神社の御祭神だから、プンスカすると車軸折れちゃうのよね。まあ、保険でなんとかするから」


「え? 保険きくんすか!」


「うん、岸和田のダンジリ保険の保険屋に入ってるから。修理が済むまでは代車でやっといて。牛頭馬頭が動かなかったら、亡者どもを地獄に送れないもんね」


「ほんじゃ、我々は、これで」


 牛頭馬頭たちは納得すると、次々に姿を消していく。気づくと、弥勒と忍者たちの姿も見えなくなっている。


「ごめんね、脚を停めてしまって。京都は神さまや仏様で一杯でしょ、古株のあたしなんだけど、神仏習合とかで、いろいろ難しくって。ま、お詫びに少し先までは送らせてもらうわ」


「えと、それは有難いんだけど、ウズメさんの服装……R18指定だから……」


「あ、堪忍どすえ。ほな、これで……」


 


 ドロンとバク転すると、普通の巫女姿になったウズメさんだった。




 北斗はウズメさんを乗せて、嵐山のトンネルに入っていった……。




 




 

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