第131話『太秦あたり・2』


魔法少女マヂカ・131  


『太秦あたり・2』語り手:マヂカ 






 気配だけが巨大な圧となって北斗と外から北斗を守護する我々正魔法少女に押し寄せる。


 決壊寸前の巨大なダムの前に居るようだ。




 一人一人の能力が高くとも、数万、いやそれ以上の忍者たちの一斉攻撃と、千数百年溜めこまれた弥勒菩薩の法力が解放されてはどうにもならない。


「そんなに、あのミロクというのは凄いのか?」


「やせっぽちの小学生くらいにしか見えないけど……」


 ブリンダはアメリカ、サムはカオスの魔法少女だ。百鬼夜行のようなオタク妖怪は分かっても、千数百年の昔から祀られている弥勒のことは計りかねるのだろう。


「弥勒は、京の都が沼地であった頃から住んでいる。都は渡来人の秦氏(はたし)が一族の総力を挙げて桂川を飼いならし、水を抜いて人が住めるようにした土地だ。秦氏は、それを惜しげもなく桓武天皇に差し出して、この千年の都が作られたのだ。桓武天皇は、秦氏に報いようとしたが、秦氏の希望は広隆寺一つ建てることだけだった。秦氏の真の狙いは、分からぬままに現在(いま)に至っている」


「マジカ、太秦って、太い秦って書くのよね」


「太というのは大の美称なのよ、桓武天皇は無欲な秦氏に報いようと姓の上に『太』を付けて太秦としたのだ。あの、弥勒の微笑は底が知れない……」




 ゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴ




「なんだ!?」


 北方の化野の方角から、赤々と炎をまとった車たちが押し寄せてきた。


「牛と馬の化け物!」


「ケンタウロスとミノタウロス!?」


「違う、牛頭と馬頭……地獄の車引よ。地獄の底から湧いて出たゴミどもよ」


「あいつらも様子見か!?」


「カギを握っているのは弥勒……」


 ブリンダもサムも西と北からの圧を受けて暴発寸前だ、このままでは、二人のどちらかが耐え切れずにフライングしかねない。


「弥勒と話しを付けてくる、二人とも、挑発にのったりしないで」


「あ、ああ」「うん」


 二人に念を押し、広隆寺までジャンプしようとした時、ソヨリと弥勒の指先が動いた!


「来るぞおおおおおおおおお!!」


 万余の忍者と牛頭馬頭ども堰を切ったように襲い掛かってきた!


 こうなると、敵にも味方にも言葉は通じない。


 正魔法少女三人は、数百年、千数百年鍛え上げた魔法少女、戦乙女の裂ぱくの雄たけびを上げて突きかかるだけだああああああ!!


 セイイイイイイイ! ドゥオオオオオオオ! オリャアアアアアアア!


 それぞれの得物を手に一閃!二閃! 瞬時に数百の忍者と牛頭馬頭を車ごと粉砕! 撃滅!


 敵どもは一度は足を止めるが、刹那の後に、大旋回しながら車掛かりに攻め込もうとする!


 我々は、無言のうちに三人背を寄せ合って守りを固める。下方では北斗が停車している。今のところ北斗に手が回っていないのが救いだ。


「正面を突破して、活路を!」


「やってみるか」


「うん」


 三人力を合わせたところで異変が起こった。


 バキ! バキボキ! ボキバキビキバキバキバキ!


 なんと、牛頭馬頭たちの車の車軸が一斉に折れだしたのだ。


「いったい、なにが起こっているのだ!?」


 忍者たちも異変を恐れて映画村の上空に引いていく。




「いやあ、遅くなってごめんねえ(^_^;)」




 レールの上空に巫女服のメイドがキラキラのエフェクトをスパークさせながら出現した。


「メイドか?」


「アキバの定番?」


「バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世 、アキバなら、先生の専門でしょ、あれはなに!?」


『巫女服というのはゲームとかラノベの世界にあるものでな、実際のアキバではコスプレ以外にはありえないぞ。それに、あのメイド服、スケスケで、動くたんびに隙間から中が見えるし……R18指定ものだぞ!』


 そうなのだ、ちっともじっとしていないで、エロいダンスをしまくって、忍者も牛頭馬頭も弥勒さえも目を奪われている。も、もしや、もしや、あやつは?




「あたしは、車折神社の天鈿女命(アメノウズメノミコト)ですよ~ん☆彡☆彡☆彡」




「え、神さまなのか!?」


「あ、あれが?」


 あ……そうだ、あの人は、そういう神さまなのだ……どう説明していいのか、こいつ……いや、この神さまをどうしていいのか、ちょっと頭がスクランブルエッグになるマヂカであった。



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